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第7話 体育祭バーニング!・11
「………」
「………」
しゃがんだ天和の目の前に現れた真っ白い子供パンツ。使用者の名前を書かないと効果が出ないとマカロが言うから、ゴム部分にはご丁寧にマジックで「ひらさかほたる」と書かれてある。
「………」
天和の顔は、明らかに引いていた。
「ほ、ほら! だから言ったんだよ! ていうかこれ、俺のチョイスじゃなくてマカロの道具だから! これ穿いてると襲われないって、言われたから……」
「………」
「白状するけど、ケツにもクマがいるんだよ。元々は夢魔の世界で、子供が性犯罪に巻き込まれないように作られたんだって……。それだけの効果があるから、俺も今日あいつらに絡まれはしたけど襲われなかったし……。今は、効果も切れてると思うけど」
天和が俺の体を回れ右させて、尻のプリントを見た。ニコニコと笑うクマ。それをじっと見つめながら、「なるほど」と呟いている。
「だから俺もお前に手出す気が起きなかった訳だ」
「え?」
「お前が仮装レースで女装した時、あの恰好のまま押し倒してやろうと思って、やめた」
「な、何てこと考えてたんだよっ……」
同時にあの恥ずかしさを思い出してしまい、俺の顔は耳まで赤くなってしまう。
「まあ確かに俺の好みじゃねえけど、穿いてるのがお前なら別にいいわ」
「うー、……」
天和がパーカと中のシャツを脱ぎ、床へ置く。続いてベルトを外そうとしているのを見て、俺は咄嗟にその手を掴んだ。
「何だよ?」
「あ、あの……できれば、二階の、俺の部屋の方が良くないかなって」
初めては自分の部屋のベッドがいい。素直にそれが言えない俺の心中を、天和は察してくれたらしい。
「そんじゃ、連れてけよ」
「う、うん」
階段を上る俺の尻に描かれたクマを、「マジでだせえな」と天和が叩いた。
これまでずっと使っていた俺の部屋、毎晩寝ていた俺のベッド。
「ん、……」
その上で俺は今、天和とキスをしている。捲られたシャツの隙間から手を入れられ、肌を撫でられている。
恥ずかしいから明かりを消したかったのに、天和はそれを許してくれなかった。今までにも何度か触れられたことはあるし、セックスの真似事もしてきたけれど。
「……あ、……」
今日は、最後までするとお互い決めている。
「ふ、……ぅ、……」
例のパンツが膝まで下ろされ、心もとなさに足の指がもぞもぞと動いてしまう。自分で膝を曲げてパンツから足を抜くと、「積極的だな」と笑われた。
「う、うるさい……」
天和の指が俺の乳首を探り当て、先端を軽く摘ままれる。たったそれだけの刺激で体が反応してしまい、俺は唇を噛んで顔を背けた。
「は、あ……、あぁ……」
もう片方の乳首に天和の舌が触れた。そのまま弾くように何度も転がされ、体中を快楽の電流が駆けずり回る。心臓はこれ以上ないほど高鳴っていて……それが天和に伝わってしまうと思うと、やっぱり恥ずかしい。
「敏感」
「……そ、そんなこと……!」
「すげえ硬くなってる」
「あっ、──や、やだっ、ぐりぐりすんなっ、ぁ……」
「痛てえか、悪い」
「ち、違う……違くて、……!」
分かっているくせに、天和は俺の反応を楽しんでいるだけだ。
俺は天和から顔を反らしたまま、小さく呟いた。
「……気持ち良いの、恥ずかしい」
「………」
笑っているような怒っているような、何とも言えない崩れた表情をした天和がじっと俺を見つめている。変なことを言ったかと思って気まずくなり、俺はその視線から逃れるようにして目を閉じた。
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