96 / 122
第7話 体育祭バーニング!・12
閉じた瞼の向こう側で、天和が言う。
「なあ、お前、……いや、何でもねえ」
「な、何だよ?」
思わず目を開け顔を向けると、そこには俺と同じくらい赤くなった天和の顔があった。
「いやその、……お前、マジで初めてなんだなと思って」
「……わ、悪かったな。慣れてなくて」
違う、と天和が距離を詰めてくる。その顔は相変わらず赤く、何だか焦っているようだ。
「俺も緊張してる」
「へ?」
「言っとくが俺も初めてだからな」
「う、嘘つけ! 今更何言って、……」
「惚れた男を抱くのは、さ」
「………」
嘘とは思えない天和の気まずそうな目には、茫然とする赤面顔の俺が映っている。ここまできてそんなことを言われるなんて思ってなくて、何と反応したら良いのか分からない。
「だからよ、嫌だと思ったらはっきり言え。お前を傷付けたくない」
「……ていうか、似合わねえ台詞だな!」
天和の精一杯の気持ちが嬉しくて、俺はつい噴き出してしまった。照れ隠しで誤魔化した訳じゃない。笑ったのは、天和のことを可愛いと思っている自分の気持ちに気付いたからだ。
照れとも怒りとも取れる真っ赤な鬼の顔で、天和が俺の頬をつねる。
「い、いだっ、痛いっ、……あはは!」
「わ、笑ってんじゃねえ! ブチ犯すぞ、てめぇ」
「それだよ」
俺は天和を下から思い切り抱きしめ、その耳に小さく囁いた。
「優しくされるのもちょっとドキドキするけど、……天和はやっぱりそうやって、我儘で強引な男でいて欲しい。俺は、……強くてカッコ良くて、自信たっぷりの真剣な天和に、……」
「炎樽、っ……」
「そのままの天和に、惚れてるんだと思う」
天和の手が俺の頭に触れた。乱暴に髪を揉まれて心地好くなり、少しだけ口元を弛める。
それからまた俺達は見つめ合い、一言、二言、他愛のない会話をしてから──深くて甘いキスをした。
キスをする時に舌を絡めるのって、口の中でセックスしてるのと同じなんだって何かの本に書いてあった。粘膜同士の触れ合いがセックスを連想させるからなんだって。
だから俺は好きな人にはキスしたくなるし、好きな人にキスをされると気持ち良くて体が反応してしまうのかもしれない。熱くて熱くて、男を知りもしないのに体が疼いて、天和がもっと欲しくなる。
「は、ぁ……」
舌を絡ませたまま、天和が俺の片脚を持ち上げた。お互い服は下着まで既に脱いでいる。そこが直接天和の体に触れて、俺が「欲情」しているのはバレているけれど……恥ずかしいよりも先に、ようやく天和と同じ気持ちになれたと思うと嬉しかった。
「んぁっ、……! あ、っ……」
唇が離れた後も、天和が俺の体のあちこちへ何度もキスを落として行く。全身を愛されているような高揚感に声が震え、俺は目尻に溜まった涙を拭いながら天和の愛撫に反応して応えた。
「うあ、ぁ……たかとも、……」
ごく自然の愛撫の流れで、天和が俺のそれに唇を被せる。芯を持った男の証が口の中で熱い刺激を受け、その耐え難い痺れるような快楽に声と腰の痙攣が止まらない。
体液と唾液で濡れた先端に弾くキスを繰り返してから、天和が俺のそれを片手で握った。
「んっ、……!」
「指、挿れるぞ。力抜いとけ」
ともだちにシェアしよう!