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第9話 マカロのたいへんないちにち・2

「……それで、学園祭当日のために今から張り切ってるのか」 「あと数日くらいしかないからな! 炎樽と天和のために俺は頑張るんだって決めてるんだ!」  サバラのアパートもコーヒーポットや炊飯器、食器洗い乾燥機などの電化製品が増えて、段々と人間の生活に馴染んできているようだ。最近は夢魔印のそれじゃなくわざわざ人間の眼鏡屋さんに行って、パソコンを弄る時用の眼鏡まで作ってもらったらしい。 「頑張るのは構わないけど、少しは物の食べ方を直せ。ぼろぼろ零しまくってるじゃないか」  出されたビスケットを口に入るだけ詰め込んでいたら、サバラが嫌そうな顔をしてテーブルを拭き始めた。獄界にいた時からそうだったけど、相変わらず綺麗好きな奴だ。 「当日は色々と食べ歩きをするんだろ。俺も学園祭なんて初めてだからよく知らないが、そんな汚ねえ食べ方をしてたら傍にいる俺か炎樽くんが恥をかくんだからな」 「思いっ切り食べた方が幸せなのに?」 「少しずつ丁寧に食べたって、どうせお前の幸せは変わらない。一口ずつ、丁寧に、よく噛んで食え」 「はーい」  返事だけをして、更にビスケットに手を伸ばす。  ビスケット大好きだ。いつも食べてるクッキーも好きだけど、少ししっとりしているクッキーとは違って、ばりばり音を立てて食えるのが好きだ。 「……ばりばり音を立てて食える」 「どうした、マカロ」 「いつもしっとりしてるけど、たまにばりばりするから好きなのかも!」 「頭大丈夫か?」  サバラが更に零れたビスケットのカスをティッシュで集め、舌打ちしながらそれをゴミ箱に入れた。 「しっとり綺麗に愛し合うセックスもいいけど、たまには凶悪なモンスターみたく、全部忘れるくらいばりばり番うセックスもいいんだろうなあってこと!」 「童貞処女のくせに何言ってんだ」 「俺じゃなくて、炎樽と天和の話!」  今のところ、炎樽たちが安心してイチャつけるのは天和のアパートだけだ。炎樽の母ちゃん達が帰って来たから家ではエロいことできなくなったし、学校もいつ誰に見つかるか分からないから常に気を張っていなければならないし。  炎樽の性格上、毎日そのために天和のアパートへ行くなんてことはない。せいぜい週一回、週末のデートを楽しんでから天和のアパートに泊まるくらいだ。 男の種が三日で満タンになるということは、炎樽と天和は三日のうちのどこかで自発的に発散しているはず。だけど自慰と交尾の射精は段違いに質が違うし、炎樽たちも種の質までは分からなくとも体で分かっているはずだ。 「学園祭ってお祭りなんだろ。きっと炎樽たちの気持ちも、ワーッてお祭り気分に盛り上がると思うんだよ。そしたら多分、今までよりずっと凄いセックスして、超絶極上の種を出してくれるはずなんだ!」 「お前、学園祭にどれだけの信頼を寄せてるんだ」 「お祭りだもん! 俺はお菓子をいっぱい食べて、天和は炎樽をばりばり食う!」 「その、いかにも子供って感じの発想は嫌いじゃないが。具体的にどうするつもりなんだ。当日はいつもよりずっと校内を生徒がうろついてるんだぞ」  炎樽の匂いがピーク時より薄まってきていることはサバラも知っている。それでも完全に匂いが消えていないどころか他の男と比べたらまだまだムンムンな炎樽だから、当日校内をうろつく魔獣から守らなければならないことには変わりない。 「だからぁ、男達の目を炎樽じゃなくて他に向けさせればいいんだよ」 「他ってどこへ」 「サバラも『お祭り』に参加して欲しいってこと!」  全く訳が分からない様子のサバラに、俺は炎樽からもらった学園祭のプリントを見せた。 『超・美少女コンテスト──当日誰でもエントリー可能!』

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