113 / 122

第9話 マカロのたいへんないちにち・8

「な、なに……最後のテストって、まさか……」  下げたファスナーの中から飛び出した先生のそれが、俺のそこにあてがわれた。 「だ、だめ……」 「うん? どうして?」 「それだけはだめ……絶対、だめ……!」  にち、と音をたてて先端が入口を押す。俺は先生の肩に手を置き、力が入らないなりに懸命にその体を突き放そうとした。  絶対だめだ。だって、これってセックスだ。  初めては好きな人とがいいって、ずっと思ってたやつだ。炎樽も天和に初めてを捧げた。俺だって夢魔だから性には貪欲なタイプだけど、だけどせめて初めてだけは── 「マカロ君、大人しくして。傷付けちゃうよ」 「先生っ、やめて……やめてくれよぉ……! 好きな人としか、しちゃいけないんだから、あぁ……!」 「ふふ」 「あっ……!」  その一瞬、頬を涙が伝った。 「あ、あ……」 「入ってるよ、マカロ君」 「うぁ、あ……お、俺……」  先生のそれが俺の中を貫いて行く。呆気ないほど簡単に、俺の「初めて」が奪われて行く。痛みは体よりも心の中に強く感じた。別に大事に取っておいた訳じゃないけど、それでもまさかこんな、よく知りもしない人に……。 「うえぇ……ひ、ひどい……」 「泣かないでよマカロ君。気持ち良くしてあげるから、力抜いて」 「せんせいのばかっ……あぁっ!」  泣きじゃくる俺を見て満足気に笑いながら、先生が俺の体をテーブルへと完全に押し倒した。そのまま両脚を持ち上げられ、先生の腰が一度引いて、──再び強く打ち付けられる。 「あっ、あっ! い、嫌だぁっ! うあっ……」 「はあ、夢みたいだ。こんな可愛い子と学校で……」 「変態! 嘘つき! 離れろよ、ぶっ殺すぞ!」  大きな手で俺の頬に触れ、意地悪な笑い方をしながら先生が言った。 「そんなべそかいて啖呵切っても、逆効果にしかならないよ? それに……ほら、マカロ君のお尻は僕のペニスを喜んで受け入れてる。本能で分かってるんじゃないのかな、ずっとこうしたかったって」 「そ、そんな訳ないっ……! お前となんかしたくないっ!」 「そうかい。じゃあ、気持ち良くなったら負けだね」 「ならない!」  再び先生の腰がゆっくりと引かれ、また強く打ち付けられた。 「──あぁっ!」  続けてもう一度、またもう一度、更に……どんどん腰の動きが速くなって、俺はもうまともに喋れなくて、ただ先生の肩に置いた手で強くシャツを握った。 「あんっ! や、やあぁっ! ああぁっ、あっ、……!」 「可愛い声だね。その顔もさ」 「うあっ、あぁ……! もう殺せ、っ……殺せよぉ!」 「大袈裟だなぁ……」  先生の唇が間近に迫ってきて、俺は思い切り顔を背けた。だけど無理矢理顎を捕らえられ、強引にキスをされる。 「んんぅっ……や、らぁ……!」  絡む舌が熱くて頭の中がぼんやりしてしまう。だめだよ、こんなので蕩けてたらこの男の思うツボだ。分かってるのに、どうして……どうして…… 「た、すけて……」 「マカロ君、……やっとお尻、馴染んできたね」 「たすけて、さばら……」  俺はぼろぼろ零れる涙を拭いながら、心の底からその名前を叫んだ。 「サバラあぁ──っ!」 「ここにいるよ」 「………」  ──え?

ともだちにシェアしよう!