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告白

俺は同性愛者だった。初めからではない、小さい時は普通に女性が好きだったはずだ。 同性愛者になったのは中学二年生の夏休み、男同士のAVを友達とふざけて観た時だった。そのブラウン管を通してみる映像は新鮮で、いつも以上に興奮したのは覚えている。もちろん、友達には何も言えなかった。友達はその映像を観ながら、笑い、蔑んでいた―――。それ以来、普通のAVを観ても、反応しなくなってしまった。 女性は恋愛の対象外。昔は柔らかい肌や大きな胸に興奮していたのに、自分でも何故こうなったのか、わからない。 それから、今まで俺は普通の男を高校2年生まで演じてきた。 けれど、今まさにそれが崩れようとしている。 「好きなんだ、圭吾の事が…。」 放課後、夕陽で赤く染まった誰もいない教室で俺は親友に告白した。 先程まで他愛無い話で盛り上がっていた教室が不気味なぐらい静かで心臓の音がうるさく感じていた。 親友という関係が壊れるのは嫌だけれど、出会ってから蓄積し、溢れそうな思いを胸の内に留めておくのは無理だった。好きで仕方なくて、女性と無理やり付き合ってみたけれど、やはり無理で結局は〝告白〟と言う最悪な選択を選んだ。 期待していないと言ったら嘘になる。もしかしたら、拒絶せずにいてくれるのではないか、という思いもないわけではなかった。 「は…?なに気持ち悪い事言ってんだよ。」 親友の冷たい視線。 ワントーン落ちた声。 後悔の波が押し寄せるが、今更後悔しても遅い。 ぎゅっと瞑った瞳から涙がとめどなく流れて机に歪なシミを作った。 聞こえてきたのは大きな溜め息。それと同時に理解してしまった。もう戻れない、この恋愛に望みはない、と。 「ごめん…もう、圭吾には関わらないから。」 俺は鞄を持って教室から逃げるように出て行こうとすると圭吾に腕を掴まれた。微かな期待が俺の中に生まれたがすぐにそれは崩れる。圭吾の顔がいつもの圭吾の笑顔じゃなく、軽蔑した表情だったからだ。それが、中学生の時の友人と重なった。 「俺の事が好きなんだろう俺の為に何でもできるくらいに。別に付き合ってもいいぜ。」 甘い囁きのような悪魔の言葉。間違ってるとわかっている。それでも、俺は圭吾と付き合えるなら受け入れてしまおうと思った。俺は小さく頷いた。

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