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休日

休日 圭吾と続けて一緒に帰るのは珍しい。俺が帰宅部で圭吾がバスケ部で帰宅時間が違うため、あまり一緒には帰らない事の方が多かった。俺は圭吾の態度に戸惑いを感じていて、曖昧な返事しか出来ず、圭吾が一方的に話しているような状態だった。 「疲れた…。」 帰宅後、俺は部屋のベッドに寝転がりながら、呟く。肉体的にというより精神的に疲れを感じている状態であった。すると、家で飼っている猫のチロ太が近づいてきた。チロ太は道端に捨てられていた黒猫で、今では小さかった頃の面影もなく、ずいぶんと大きくなった。甘えるように黒い体を擦りつけてくるチロ太を撫でていると、触ってほしくない場所を触ってしまったのか、噛みつかれてしまった。 「チロ太!」 チロ太を怒ると、チロ太はそっぽを向いて部屋から出て行ってしまった。 再び体をベッドに沈めて、思い出して不安に思うことがあった。圭吾に休日だから遊ばないかと言われたのだ。午前中はバスケの練習があるため、午後からになってしまうらしい。 今まで、遊んだことがないわけではない。ただ、何をされるか分からなくて不安で、圭吾を信じきれない自分が情けないと思っていた。 ・・・・・・・ 「もうこんな時間だ…。」 昨日は結局、あまり眠ることが出来なかった。時計を見ると12時半を回っていた。俺は抱いていたチロ太を床に下ろして、立ち上がる。チロ太は甘え足りないのか、足にまとわりついてきた。 「帰ったら、また遊んでやるから。」 俺はチロの頭を軽く撫で、家から出た。圭吾は着替えてなどがあるため、圭吾の家で遊ぶことになっていた。圭吾の家に太何度も訪問した事はあるが、これほど緊張するのは初めてだった。圭吾の家は一軒家で他の家よりも立派だと思う。確か、ご両親が共働きで少しばかり裕福なだけと圭吾は笑っていた。玄関のチャイムを鳴らすとすぐに圭吾がドアを開けた。 「あがれよ。」 「お邪魔します…。」 圭吾は少しぶっきらぼうな声で出迎えた。家の中は静まり返っている。今日は休日であるがご両親は仕事で圭吾しかいないらしい。今まで、圭吾のご両親の姿を見たことはない。俺達は階段を上って、圭吾の部屋に向かった。 「適当に座って。」 部屋に入るなりそう言われ、俺はテーブルの前に座り、圭吾は前のベッドの上に座った。 あらかじめ用意してあったようでテーブルの上にはお茶が入ったグラスが置いてある。温度差で水滴がグラスに付着し、小さな水たまりを作っていた。 喉が渇いていたのでお茶を何度か飲んで喉を潤した。 「俊哉は男同士でヤったことある?」 圭吾の突然の問いに顔を赤くし、お茶で盛大に咽てしまった。そして俯きながら、俺は首を横に振る。そもそも、女性とも経験はないし男性と恋愛する機会もなかったため知識も少ない。 「ふーん…じゃあ、初体験したい?」 「え…?」 俺は圭吾の思いがけない言葉に目を丸くして、顔をあげた。そこには、〝あの表情〟の圭吾がいて、なんだか嫌な予感がした。静かな部屋で階段を上る足音が耳に届いた。それも、複数の足音でまっすぐこの部屋に向かってくる。 「おっ邪魔しまーす!」 元気な声と共に入ってきたのは見覚えのある2人の男。確かバスケ部の2年生の江藤と同じく2年生の伊野だ。なぜ、この二人がここに来たのかが分からず、圭吾を見た。しかし、目の前に江藤が割り込み俺の顎を掴んでまじまじと顔を見てきた。その視線が嫌で逸らそうとするが力で敵うわけもなく、されるがままだ。 「やめてくれ…。」 「遠くで見るより全然美人!こんな美人とヤれるとかラッキーなんですけど。」 俺は江藤の言葉に驚き、目を見開いた。江藤の肩越しにみる圭吾は俺の様子を楽しそうに見ながら肯定の言葉を言い放った。信じられず、頭の中で理解できないまま困惑していた。 俺は、圭吾のためなら酷いことをされても耐えられたけれど、他の誰かから受ける行為は嫌に決まっている。 「坂下だっけ?宮田の友達だよね?俺、4組の江藤っつーの。」 そう言ってそのまま江藤は俺を勢いよく押し倒された。 ぶつけた背中が痛い。顔をあげると興奮したような江藤の顔。俺は危機感を感じ、逃げようとしたが帰宅部と運動部じゃ話にならない。簡単に押さえ込まれてしまった。 「はな、せ…っ」 自然と声が震える。これから行われるだろう行為に恐怖を感じる。何より、圭吾が提案者だと考えると悲しくて、涙が自然と出てきた。ここまで感情が顕著にでたのは久々な気がする。情けない、悲しい、どうして、と。 「泣いちゃったー?泣いても止めないよ。ねぇ、伊野ちゃん。」 「俺に振るな。俺はパス。そういう事なら早く言え…それなら来なかった。」 そう言って伊野は俺や江藤から離れて座った。江藤は残念そうに口を尖らせるが、すぐにこちらに気を向けた。いつの間にか圭吾が俺の頭上に来ていて俺を見ていた。蛍光灯の影で表情はよくわからない。 「腕押さえてるから、服脱がせろよ。」

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