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俺の気持ちをわかってください。
「なぁこれは?」
「うーん……悪くはないですけど」
「じゃーこっちは?」
「手持ちのズボンと合わせにくくないですか?」
考える俺を前に遥さんが眉を潜め軽いため息を吐いた。
「わかった」
「え」
「もうお前の選んだ服しか着ない」
投げやりにも聞こえる声。
これは………飽きたな。
選ぶのにも買い物にも。
遥さんの気分屋なところにも当然もう慣れっこだ。
そして、気分を直す方法も俺は習得している。
「じゃあ、これとこれ、試着してみて下さい」
渋る遥さんに服を持たせ試着室に押し込んだ。
着替えている途中、そんなことは承知のうえで試着室を覗く。
「どうですか?」
「ま、だ、着替えてるって」
細い腰と薄い腹が見えたまま遥さんが俺を振り返る。
「別にいいでしょ、見てても」
「いいけど…お前の目は、なんかやらしいんだよ」
そりゃそうだ。
そういう目でいつだって見ているんだから。
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