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二人が一番。
「そばは?」
「買いました」
「あ、葱」
「買いました」
「あとはー」
「ビールとアイスとチョコレート」
「買った!」
大晦日を明日に控え、侑司とスーパーに買い出しに行き帰ってきた。
アレコレ言い合いながら2日かけた大掃除。
一昨日は侑司の実家に、昨日は俺の実家に。
連休になっても休んでる気がしない。
でもようやくのんびりゆったりと時間が流れる休みを迎えられる予感に顔が緩む。
二人で過ごす大晦日は実はそれほど多くない。
どちらかが実家に呼ばれていたり、昔の友人と集まったりで一緒にいられる大晦日は久々だ。
侑司の笑顔が嬉しそうに見えるのはきっと気のせいじゃない。そんな侑司を見てる俺の顔もきっと緩んでる。
早めの夕飯を軽く済ませ、久々に一緒に風呂に入る。
後ろから甘えるように抱き締める侑司を振り返り数え切れないほどちゅーをした。
「蕎麦、何時ごろ食べる?」
「年越すギリギリですかね」
「腹減ってきた?」
「別の意味で減ってます」
「?何か他のモン食いたいの?」
はい、と答えた侑司の唇が項に吸い付く。
「くすぐってー」
「くすぐったいだけですか?」
「……今?」
もう声でわかる。
俺を欲しがる甘い声。
「ダメですか」
「今ヤルと俺寝るって」
腹に回されていた手が撫でながら上がり、まだ勃ってもいない乳首を弄り出す。
やめろと言いかけた口を塞がれ、熱い舌を与えられると嫌がる振りすらもう意味をなさない。
やっぱり風呂は別々だな。
この手に声に抵抗することなんて俺にはもう出来ないんだから。
みっともないほど喘ぐ声と、俺の名前と、水音が響く。
塞げと開いた口を思ったままに塞がれ、そのまま昇らされ果てさせられた。
身体の外に吐き出された滑る液体が俺の太腿を下っていくのを滲む目で追った。
「なんで外に出すの…」
「え」
「まだ…出来るよな?」
「遥さん、でも」
「うるさい。俺の中でイクお前を見るのが好きって知ってんだろ」
「……はい」
「意地悪すんなよ」
首に手をかけて引き寄せてやると侑司の喉仏が大きく上下するのが見えた。
「………ちょーだい、ダーリン」
「はい、ダーリン」
ふはっと笑った口がすぐに声を堪える形に変わる。
顔を身体を流れるのが汗か水かわからない。
突き上げられ浮かされながら縋りついた背中に血が滲むのが微かに目に残った。
髪を撫でられる感触に目を開ける。
「起きました?」
ソファに寝かされていた俺を見下ろす侑司の笑顔にいつもホッと息をつく。
水を持って戻ってきた侑司の手からグラスを受け取り飲み干すと一気に脳も身体も覚醒した気がした。
「今何時?」
「もうすぐ年が明けます」
やっぱり寝たか。
グラスをテーブルに置いた侑司が俺の後ろに座りいつものように腹に手を回す。
振り返る唇に軽いちゅーをして頬を擦り寄せた。
「腹減った?」
「まだ大丈夫です。もう少しこのままでいましょう」
「ん……」
ほとんど聞こえないつけられたテレビの音を少し上げる。
二人しかいない。
二人だけのこの場所が好きだ。
ゴーン、とテレビから鐘の音が微かに聞こえる。
静かな年明け。
また何も変わらない一年が始まる。
約束しなくても同じ場所に帰り眠る。
それが何よりも大切だと思えるのはお前が側にいてくれるから。
愛してるよ。
でも何となく照れるから_______
「……今年もよろしくお願いします」
「はい!こちらこそ」
「蕎麦、もうちょっと後でいい?」
「はい?」
「………抱っこ」
「……はい」
今年も来年も再来年も。
その先もずっと、二人が一番いい。
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