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喧嘩のあとは。
思わず俯く俺を知ってか知らずか、両親は話しを続ける。
「酔ってからはもうね〜」
「侑司好き好き言ってたな〜」
「ね〜」
嬉しそうな声に背を向けつつ、着込んだままだったコートを脱ぐ俺に父さんが言った。
「何かあったのはわかるが、ちゃんと2人で話をして遥さんの不安や心配を取り除かないとな」
「うん……ありがとう」
遥さんが起きた時に飲ませてあげなさい、と水のペットボトルを枕もとに置き、両親はおやすみと寝室に引っ込んだ。
加湿器の微かな運転音だけがするリビング。
いつもと違い、触れ合えない距離で眠る愛しい人。
『なんで同窓会行かねーの』
些細な喧嘩は、沢田からの同窓会の誘いを濁した電話から始まった。
不参加のハガキを送っていたのに連絡が来たのは急遽不参加になったヤツが出たとかで、幹事だった沢田が俺に連絡をしてきたのだ。
その返事を濁しつつ断った俺にまたかけるからと粘る沢田との会話を、遥さんは聞いていたのだ。
最初は素朴な疑問からの言葉だったと思う。
『いや、別に深い意味はないですよ』
そう答えた俺に遥さんがさらに食い付く。
『何、会いたくない元カノ元カレでもいんの』
『そ、んなこともないですけど』
『じゃあなんで行かねーの。久々に会いたいヤツもいるだろ』
この年齢にもなると、同窓会での話題なんてだいたい決まってる。
結婚はどうだ、子供はどうだ。
あなたとのことで嘘をつきたくないんです。
そう言うと眉毛をきゅんと下げ、困ったような悲しいような顔をあなたがするのがわかる。
だから、行きたくないんです。
そう言えれば。
でも言えない。
どれほど愛し合って結婚したとしても、子供を授かったとしても、離婚する夫婦がいる。
それなのに、適齢期になれば結婚はどうする、子供はどうすると必要なことのように求められるこの流れ。
まるで、結婚できない俺達は、俺では遥さんを幸せにはできないと言われているようで腹の中がもやもやとする。
二人でいられればそれでいい。
今の暮らしが俺にとって最上であるように、遥さんにとってもそうであれば。
認められなくてもいい。
そう思っていたのに、それと同じくらい認めて欲しいと思っていたのかもしれない。
ただの紙切れ一枚の届けであっても。
それを見透かされているようで、つい投げやりな言い方をしてしまった。
「わかりましたよ、そんなに言うなら同窓会行ってきますよ」
遥さんのいる前でついさっき話した沢田の番号をタップし、同窓会に行くと告げる俺を、眉を下げた遥さんがじっと見ていた。
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