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甘いのも悪くない。
チョコレート特設広場ではなく、いつもの地下。
あんな人混みと、チョコレートと香水、化粧品の匂いの中を突き進んで行くほどマゾじゃない。
本命にはゴディバ。それは今でもそうなのか、ゴディバの売り場にはたくさんの人が群がっていた。
チョコレートを買うならメリーと決めている。
いつものように小さな箱詰めを人数分買い、ついでにヨックモックで大好きなクッキーも買った。
昼食用にアンデルセンに寄ると、焼き立てのクロワッサンに出会えたので、それも人数分買い込んで事務所に戻った。
戻ると事務所には遥くん一人。
「他の人は?」
「誠一さんは真由ちゃんを連れてランチに。泰生さんは少し早いけど今日はどこ行っても時間をとられるから出ますって外回りに。
侑司は……」
言い淀む遥くんに買ってきたチョコレートを渡す。
「デパートに……」
「チョコレート買いに行ったの?もしかして」
「うん………」
焼き立てのクロワッサンの匂いに笑顔で齧り付く遥くんに、コーヒーを渡しながらちょうどいいと聞いてみた。
「ねぇ、侑司くんのどこがそんなに好きなの?」
遥くんの口からクロワッサンの欠片が吹き飛んだ。
「え、え!?」
「だってさ、遥くんは元々男性が好きな訳じゃなかったじゃない」
「まぁ、うん」
「なのにもう………何年だっけ」
「………7年」
「そんな長くずっと好きなままなのがちょっと不思議で」
そっぽを向いたままコーヒーを啜る遥くん。
耳が赤くなっている。
「え、本当に言うの」
「言え」
千切ったクロワッサンを口に放り込みながら頷くと、遥くんがため息を吐いた。
「理由は……侑司だから、としか言えない」
「は?」
俯いた遥くんの耳がさっきよりも赤く染まった。
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