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改めて誓います。
「何しに来たんだ」
久しぶりに見る仏頂面に笑みを浮かべた顔が引き攣る。
仏頂面の強面のでかい背中から母さんが顔を出し、嬉しそうに笑った。
「おかえりなさい。早く上がって」
俺の荷物を預ってくれながら、母さんが俺の後ろを見る。
「あら?侑司くんは?」
「………俺だけ」
「後で来るの?」
「………来ない。家出して来た」
「今度は何をやらかしたんだ!」
それまで黙っていた仏頂面がいきなり大声を出して俺を怒鳴りつける。
今度は、って何で俺がやらかす方なんだよ………
やっぱり侑司の実家に行くべきだった。
初めての家出は侑司ん家にしたから、こっちにしとくかと来てみたけど、やっぱり居心地はすこぶる悪い。
ひとまず、とリビングに行き腰を降ろしたそのすぐ後で、父さんが睨みつけるように視線を向けながら口を開いた。
「お前はもう嫁いだ身だろう。そんな簡単に家出なんかするもんじゃない」
「嫁いだ身って……」
呟く俺に母さんが小さく噴き出した。
「嫁いだんだろう!侑司と、その、お前はぱぱぱ、パートナーなんだろうが!」
「うん、まぁ……パートナー、だな」
はぎれの悪い俺を見た父さんが母さんに酒、と一言告げると、はいと答えた母さんが台所に消える。
「どうせ泊まっていくつもりなんだろう。飲め。飲んで全部吐いてしまえ。事と次第によっては………侑司を絞める」
「絞めないでよ」
「それは聞いてから決める。家出してきといて話さないとか抜かすなよ」
この人に何かを話す。
それはこれまで一度もなかったような気がする。
それなのに、話すことが非常にデリケートな話しとは……
確かに酒を飲まなきゃ話せることではない。
お待たせの声と共に運ばれてきたのは瓶の酒。
黒いラベルには「一刀両断」。
小さな猪口に継がれる透明な酒を一口含む。
「辛っ」
「辛口の旨さがわからんとは」
呆れるように溢して父さんが猪口を煽る。
美味そうに喉を鳴らして飲み込む辛口の日本酒。
こうして酒を飲むことも、少し前までは想像も出来なかった。
そう思うと、辛口の酒がさらに辛く感じた。
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