5 / 112

2-2

志摩が泊まる引率者用のリーダー室には狭いながらもユニットバスがついていた。 「どーも……」 そこで岬はシャワーを浴びた。 肩にタオルを引っ掛け、部屋の角に設置された浴室から出ると、志摩は二段ベッドの下に窮屈そうに腰かけて日程表を眺めていた。 「どうも」 こぢんまりしたフローリングの部屋には二段ベッドが一台あるのみ。 イスやテーブルはない。 担任と生徒の荷物は床の片隅に纏めて置かれていた。 行き場に迷った岬は馴染みのない二段ベッドの上へ行こうと、ハシゴの一段目に危なっかしげに足をかけようとしたのだが。 「違う」 「は?」 「俺が上。お前は下」 「じゃあ退けよッ」 「隣に他の先生方がいらっしゃるから静かにな」 プリントから視線を外さない、退こうともしない志摩に岬は舌打ちした。 彼の横の隙間から二段ベッドの下に潜り込む。 わざとぶつかれば「でかいケツだな」と揶揄されたので二回ぶつかってやった。 初めての寝具。 嗅ぎ慣れない木の匂い。 大きく唸る風の音。 室内の静寂に奏でられる教師の浅い息遣い。 「俺さ」 「うん」 「プールねぇからこの学校にしたんだよな」 頭の後ろで両手を組んだ岬は真上に迫る床板を見上げて言う。 「それに校則緩いし。外見のことウダウダ言われないで済む」 「そうか」 「中学の修学旅行はサボって行かなかった」 「来年は来いよ」 真上に迫る床板から、チラリと、志摩の後頭部に目をやった。 「来年、センセェ、また俺の担任やんのか?」 「さぁ。まだわからない」 仏頂面になった岬は寝返りを打って志摩に背を向けた。 薄っぺらな掛け布団に抱きついて「もう寝るッ、電気消せッ」と、ふてぶてしげに吐き捨てた。 「今から反省会だ」 「ッ……反省だらけだろ。森で迷子になった奴、何人いたんだよ」 「まぁ、日暮れ前に全員回収できたし。今回は順調な方だ。腹壊した奴も今のところいないし」 半袖シャツに黒のジャージを羽織った志摩は立ち上がる際に、くしゃり、また岬の頭を撫でていった。 「カレーうまかった、ごちそうさま」 ふと目が覚めた。 半開きの双眸で普段よりも濃厚な暗闇をぼんやり見つめる。 肌寒い。 ガタ、ガタ、夜風に軋む窓。 掛け布団を掻き抱いた岬の目が徐々に暗闇に慣れてきた頃に。 「……」 上のベッドで眠る志摩の深い息遣いを暗闇伝いに感じた。 すぐそばにある気配におもむろに胎底が騒ぎ出す。 さらに、ぎゅっと、薄くて頼りない寝具を抱きしめる。 深夜にあからさまに目覚めた欲望に忠実に。 服越しに恥部を擦りつける。 腰を揺らめかせて微弱な刺激を無心になって追い求める。 やがて物足りなくなった岬はハーフパンツの内側に利き手を忍び込ませていった。 下着の中にまで。 あっという間に熱が集中して雄々しい起立を始めたペニスを一撫でし、もっと下へ、貪欲にヒクつく亀裂を上下になぞった。 「ン……」 岬は寝苦しそうに息をついた。 壁側に向かって寝返りを打ち、なぞるだけじゃあ満足できなくなって、浅く出し挿れさせ、仕舞いには中指を捻じ込んで直に粘膜を引っ掻いた。 「っ……はぁ……ぅっ……ン……」 皮に埋もれていた肉芽を撫でる。 溢れやすい愛液を馴染ませて、ソフトに虐げるように、何度も。 すぐ真上で寝ている志摩の気配を感じ取りながら多感な性器を(いじ)くり倒した。 「んん……っ……ン……ン……ぅ……っ……っ」 ギシリ 束の間、瞼に閉ざされていた岬の吊り目が俄かに見開かれた。 秘めるべき自慰で加速していた鼓動が一段と勢いづく。 押し寄せてくる期待についつい喘ぎそうになる。 間もなくして二段ベッドの下に追加された体温。 何の言葉もなしに生徒に添い寝した教師は暗闇伝いに難なく嗅ぎ取った色めく欲望を叶えてやる。 「あ……っぅ……ン……っ」 自分の利き手を辿ってやってきた志摩の指先に岬は声を洩らした。 「しー」 耳打ちで諌められると首筋が粟立ち、耳たぶを舐め上げられると喉骨が引き攣った。 骨張った長い指が肉襞を抉じ開けて膣孔を訪れると急所を仕留められた獣さながらに呻いた。 「濡れて熱い」 ボリュームを抑えた囁き声に瞼をピクピクさせ、岬は、服の内側で恥部に添えられた手に手を重ねた。 「志摩センセェ……俺ぇ……俺の体……おかしい……?」 「おかしくないだろ。思春期で夜な夜な興奮するのは当たり前だ」 「男なのに……どこもかしこも、こんな濡れんの……変だろ……こんな体……」 しんなりした白アッシュの短髪に鼻先を沈めて志摩は答える。 「反抗期ちゃんにしては素直で可愛いんじゃないのか」 ヴァギナの中で小刻みに指を動かされながら、そう囁かれて、岬は……軽く達してしまった。 「ッ……あ、あ、う……ッ……ッ……ッ……!」 割と厚みのある腰をビクつかせ、健気に指を締めつけてくる岬を、眼鏡をかけた志摩は覗き込んだ。 「声、我慢するって約束できるか」 この一週間余り、休み時間や昼休み、放課後、校内のありとあらゆる死角で志摩の両手に意地悪く優しく慰められてきた岬は首を左右に振った。 「っ……できねぇ……声も、ガマンも、むり……おあずけ食うのヤダ……志摩センセェ……」

ともだちにシェアしよう!