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ご乱心インサバスは数人のクラスメートをぶっ飛ばした。 よく見知った友達に止められ、やり返してきた生徒共々職員室に連行され、教師らにくどくど説教されていたところへ。 「中村は俺のことを庇ってくれたんです」 志摩が氷嚢で片頬を冷やしながらのこのことやってきた。 「どういうことだ? 最初に中村が殴ったのはお前なんだろう?」 「せんせ~、おれは志摩のこと殴ってませ~ん」 面倒くさいことに岬とケンカをした相手も同じ中村姓であり、歪んだ眼鏡をかけた志摩は肩を竦め、言い直した。 「中村岬は、日頃から俺を地味だとか根暗だとか言っていた彼らに腹を立て、俺の代わりに怒って殴ってくれたんです」 「いやいや、最初に殴られたのはお前だろう、志摩?」 「中村岬は、いつまで経っても言い返そうとしない気弱な俺を奮い立たせるため、俺を軽く殴っただけです」 「えぇぇえ……」 学年で最も成績優秀な生徒の言葉に教師らは顔を見合わせた。 岬を「ヤリチン」呼ばわりしていた生徒らは、実際、志摩のことも散々小馬鹿にしていて反論できずにいた。 岬は。 板についた仏頂面で志摩を睨んでいた。 「俺のために拳を振るったことは秘密にしておく約束だったけど、お前だけが悪者になるのは許せなくて本当のことを言いにきたんだ、約束を破ってごめん、中村岬」 いけしゃあしゃあと大嘘を述べた志摩が意味不明で癪に障って仕方がなかった……。 「見かけによらず繊細なんだな」 「はぁ?」 「淫魔筋だって言い当てられて、あんなに動揺するなんて思わなかった」 放課後、立ち入り禁止の屋上へと続く人気のない階段の踊り場。 「なんで俺が淫魔だってわかったんだよ、志摩」 壁に寄りかかった岬がケンカ腰に尋ねれば志摩はさらりと答えた。 「俺も淫魔筋だから」 「はぁ!?」 「でも、お前は変わった匂いがする」 「匂い!? 臭いって言いてぇのかよ!?」 首を左右に振った志摩が眼鏡を外し、フレームの歪みをチェックしているのを見、驚かされてばかりの岬は不満げに唇を尖らせる。 ……俺だけが驚いてばっかで面白くねぇ。 ……つぅか、俺は学校で同種に会うなんて初だけど、コイツは今まで会ったことがあるのか? 「眼鏡、弁償すっから」 一先ず、岬はふてぶてしげに弁償を申し出た。 「殴られてびびったろ、怖がらせて悪かったな」 「むしろ俺の方が悪かった、あんなに動揺させて。よっぽど驚いたんだな」 「別に驚いてねぇ!」 「それに殴られたことは気にしてないよ。経験あるから」 「あー、お父さんとかにだろ」 「ううん。寝た相手の恋人から」 「はぁ?」 また素直についつい驚いてしまって歯痒くなる岬なのだった。

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