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第1話 ~プロローグ~
俺は生まれた時から、たくさんの大人達の中で育った
大の大人が皆んな俺の事を「若」「龍臣さん」と呼び俺の遊び相手になり我儘を聞いたりする。
親父も母さんもそんな俺を何も言わずに自由に伸び伸びと何不自由無く育った。
小学校の高学年になるまでは、普通の家庭と違うと感じた事は俺自身は無かった。
小学校に入学して初めて同年代の子達と接し、俺は運動も出来たし頭も良かったから、クラスでも友達は多かった。
活発ではっきりと物事を話す俺はクラスでも一目置かれる存在で、学校の先生達もそうだった。
だが、先生達が俺に対して一目置いてると思ったのは俺の勘違いで、先生達は俺のする事に関知しない.深入りはしないと言うスタンスだったのが、後々解った。
高学年にもなると人気者だった俺の事を良く思わない奴も現れ、スマホのLINEで「海堂龍臣はヤクザの子‼︎ 海堂組の子供だ‼︎ 逆らったら、何をされるか解らないぞ‼︎ 関わるな‼︎」チェ-ンメ-ルが出回り、今まで友達だと思ってた子がどんどん俺から離れていった。
始めは何がどうなってるか?解らずに居た俺は普通に話し掛けると、怯えたような目で俺を見て誰も俺に話し掛ける事が無くなった。
それは先生達にも言える事だった。
子供心に傷付き親を恨んだ事もあったが、悔しくって学校での事は親には決して言わなかった。
小学校卒業間際には俺は開き直り、傍若無人に振る舞い逆らう者は暴力で抑えた。
そんな俺を見兼ねて中学は少し離れた私立に通うようになり、車での送り迎えが始まった。
学校には家の事は内密に親の方から申し出てた。
親父達も薄々状況が解ってたのかも知れない。
親は環境が変われば……と思ったのかも知れないが、俺はその時には既にヤサグレて居た。
どうせ、親の後を継ぐんだ‼︎
決められた人生だ‼︎
どんなに俺が品行方正で優秀でも、誰もそんな目では見ない! 常に、俺のバックボーンに怯え俺自身を見ない‼︎ と悟って居た。
親もある程度は警察沙汰にならなければ目を瞑って容認してくれて居た。
そこはヤクザの親分らしく度胸が座って居た。
1つだけ約束させられた。
『何をやるのも自分で責任を取れ‼︎ 人様に迷惑掛ける事はするな‼︎』
喧嘩などは虐めじゃなく理由があるなら容認された。
親なりに俺を理解しようと思ってたんだろうな。
その時には思春期で親の気持ちなんか解らずに居た。
中学では1匹狼で誰ともつるまず、売られた喧嘩は進んで買って憂さ晴らしをしてた。
俺は体もデカく目つきも悪く、いつも眉間に皺を寄せ笑う事は無かった。
幾ら内密に頼んでもどこかしら漏れるもんだ。
中学生にしては強面の俺の風貌は、ヤクザの息子だから仕方無い.関わるなと表だっては言わないが陰で周囲には思われてたのも知ってる。
別に、そんなのはもうどうでも良かった。
学校から帰ると若い舎弟達と夜の街を徘徊し遊び歩く
そんな夜の街で遊んでる俺は童貞を捨てたのも早かった。
遊び仲間の若い舎弟の1人に「龍臣さんもそろそろ女を知っても良いのでは?早く童貞なんて捨てた方が良いですよ?もっと楽しめますよ」と、親父が経営してるキャバクラが数店あるうちの1番売上がある店の当時のNO1のキャバ嬢に手解きを受け童貞を捨てた。
俺は初めては好きな人とセックスしたいとは別に思っても居なかったし好きな相手も居なかった。
中学2年の思春期で性にも興味があった時期だった。
そのキャバ嬢も店でNO1と言われるだけあり、顔もスタイルも申し分無くセックスも上手かった。
若い俺にはセックスの気持ち良さの虜になった。
何度かセックスしてると「龍臣さんは呑み込みが早い。私達はピル飲んでるから大丈夫だけど、素人の人とは必ずゴムは付けてね」と言われてた。
そのキャバ嬢以外にも他の店のNO1.2と、何人かセックスする相手を作り有り余る性欲を放出してた。
そんな生活が1年程経ち、店のキャバ嬢に手を出した事が親父にバレた。
「店の商品には、手を出すな‼︎」と、こっぴどく親父に叱られた。
それからは若い舎弟と夜の街で知り合った女達と1夜を過ごし発散してた。
学校でも悪い男に憧れる女は居たし、俺に近寄って来る女は大概遊んでる女達だった。
そんな女達に誘われると抱いたりしてた。
女に不自由する事も無く、誰とも付き合う事もしなかった。
誰にも本気になる事は無かった。
若い欲望を発散出来れば、それで良かった。
どうせ俺の家の事を知ると、皆んな逃げて行くのが目に見えて居た。
それ程俺には、あの小学生の時の事はトラウマになって居た。
中.高一貫の学校で、そのままエスカレ-タ-式に高校に上がるのが決まってた。
高校に行ってからも相変わらずな生活をして居た。
ある日、クラスでも目立たず大人しい女から「海堂君…ずっと憧れてたの。1度だけで良いから…お願い……思い出にしたいの」と、告白され、俺は迷った
大人しいが顔立ちもスタイルも悪くは無い……が、俺に寄って来る女達とは系統が違い過ぎて、軽く抱く事は躊躇った。
俯き、教室の床を見て「親の都合で引越しするから……夏休みには別の所に行くの。だから…思い出に」声が震え足も震えて居る姿を見て、勇気を振り絞って言ってきたんだと思ったら、1度きりなら応えてやるのも……と、誰も居ない空き教室で抱いた。
その時に、運の悪い事に持ち歩いてたゴムが切れていて無かった。
ゴムが無い事に気が付いた時には遅かった。
始まったセックスは止まらず、処女だろう女の膣の締め付けがきつく欲望の赴くまま中に放出していた。
1回だけだし……大丈夫だろうと、その時に軽く考えて居た。
その女とは本当に1度きりだった。
夏休み明けに学校に行くと、教室には女の姿は無かった。
やはり引越したんだ位にしか思わず、その女とはそれっきり会う事も無かったし、その内に俺の記憶からは薄れていった。
それから半年程経った時に親父の部屋に呼ばれた。
親父と母さんの2人が揃って居た。
これはただ事じゃ無いと直感したが、自分の生活を省みて叱られる事だらけで見当がつかなかった。
覚悟を決め目の前に座ると、暫くの沈黙の後に親父が口を開いた。
「林 智花って子は、知ってるか?」
「……誰?」
俺の返事に、親父と母さんは黙りしかめっ面をして居た。
林 智花?知らねぇ~な。
「その子の親御さんが先日家に来てな。その智花さんが妊娠してるそうだ。相手はお前だと言ってるが?心当たりは無いか?」
妊娠⁉︎
驚き、 ‘智花…林…智花?…智花?’ と、相手の名前を頭の中で考えたが思い当たる人は居ない‼︎
妊娠! って言われても、ゴムをいつもつけてるしなぁ~。
ゴムをつけても完璧だとは言えないが……そこでハッとした。
1度だけ…ゴム無しで……シタ‼︎
俺はすっかり忘れて顔も思い出せないが、あの時震えながら勇気出して居た子の姿だけ朧げに思い出した。
「……心当たりがあるが…1回だけだ」
あの1回だけで妊娠したのか?
俺の後にも誰かと……でも、大人しく真面目そうだった。
「そうか……相手の子はお前だけらしいからな…たぶん、お前の子だろう。その子が妊娠に気が付いた時には誰にも言えずに居たらしく、もう堕す事は無理らしい。相手の親御さんは子供は産むしか無いが、子供の将来を考えて家に相談に来た。家がヤクザ家業をしてるのを知り、今後は一切関わらない事を条件に子供は家で引き取って欲しいと言われた」
「………」
何も言えなかった。
たった1度の過ちが、親父達に迷惑掛ける事になった事を悔やんだ。
「それでだ、母さんとも相談して子供はわし達の子供として養子縁組する事にした。相手にも見舞金として多少だが示談金を渡し、それで一切関わらない事を約束した。戸籍上はお前の兄弟(兄妹)になるが、今後はお前も父親としての自覚を持ち、今後の人生を考えろ‼︎」
「……済まない‼︎」
俺は頭を畳に擦りつけ土下座をした。
静かに話す口調だが怒りはある筈だ。
怒りを抑え、俺を悟すように話す親父に感謝し、逆に心に突き刺さった。
「……してしまった事は仕方ないが、今後は自分で責任取れる生活をしろ‼︎……母さんと相談して、今の生活では変わらないと判断した。そこで、お前にはここに行って貰う」
パンフレットを渡された。
高校のパンフレットでパラパラ…開くと、男子校で寮も完備されてた。
「…行くのは構わないが……結構、偏差値高い…今の俺には無理だと思う」
反省の意味でも親父達に従おうと思った。
「2年の夏休み明けには通えるようにした。編入試験がそれまでに一応形だけあるが、ある程度点数が取れないと困る。それまで勉強しろ! 良いな‼︎」
「……解った。親父、母さん、迷惑掛けて済まない‼︎」
もう1度、土下座をした。
「これからのお前の人生に子供も居る事を考え、行動しろ!」
「……はい」
それから俺は親父達の恥にならないように勉強し、編入試験を受けた。
そして中途半端な時期の高校2年の夏休み明けから、新しい学校に行く事が決まった。
そこでの彼奴らとの出会いが、俺の人生を大きく変える事になった。
そして……1番大切な人との出会いも。
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