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第四章・29
「ジンガラ、私のことが気持ちが悪くはないかい?」
「ぁん? パッサカリアちゃん、どうして?」
ソファでお茶を飲みながら、パッサカリアは物憂げにジンガラに話した。
「植物をあんなに急成長させる魔術を持つ人間だなんて、化け物じみてる。普通じゃないよ」
「そんなこと、考えてんの? 馬鹿だねぇ~♪」
それを言うなら、俺も人様の精神に影響を与える、奇妙な魔術を持っている、と笑った。
「人は大なり小なり魔術を持つもんでしょ? いちいち気にすることないって!」
君にそう言われると、ほっとする、とパッサカリアはジンガラの頬にキスをした。
「ん~♪ パッサカリアちゃん、好き好き~」
ちゅっちゅとキスを交わしながら、ジンガラは、ふと何かの気配を感じて動きを止めた。
「どうしたの?」
「や、ちょっとね」
テーブルに置かれている、小さな観葉植物の鉢植え。
ジンガラはパッサカリアのスカーフを外すと、そっとその上にかけた。
「見られてる気が、するんだよね」
植物といえども、人と同じ。喜び悲しみ、怒り笑う、とのいつかのパッサカリアの言葉を、ジンガラは思い出していた。
やきもちを妬かれると大変だ。
緑に目隠しをして、二人はもう一度抱き合い、口づけた。
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