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【1】今日はこの辺で許してやンよ!

竜ヶ崎学院男子中等科、中学三年生の秋だった。 生徒会室にて会長を務めている、春日・オズヴァルト・雅と、副会長である兄崎 優紀は生徒会執行部最後の仕事を行っていた。三年と言う事もあり、二年生が主導になってはいたが会長である春日もやはり仕事をしていた。 暑くて怠くて眠くてどうしようもない状態で休息の合間にしりとりをして、その流れで冗談を言い合う様に告白とキスをした。 一度目は軽く。 乾いた表面と信じられない位の柔らかさ。 それ以外何かを考えることなどできなかった。 角度を変えて二度目をしたとき、春日の唇がかさついていることを始めて知る。 そっと後頭部を支え口付けを深くしたとき、夢から醒めたような顔で春日は兄崎を突き飛ばした。 「あ…」 突然照明を当てられた暗闇の猫みたく目をかっと見開いて茫然と見つめていた 。 「春日?」 「雰囲気に流された。忘れてくれ。」 「嫌だったの?」 いや、そうじゃなくて。 と、珍しく口ごもりながらまるで失態を犯したかのような表情を浮かべた。 そりゃぁ、そうだ。 キスは春日から強請ったのだから、嫌悪などあるはずはない(と信じたい。) 赤面し狼狽えていたのだ。 如何して良いのか分からない、と言った所か。 自分自身に戸惑っているのかもしれない。 春日に恋をしていた兄崎としては関係性の変化をもたらすには良い機会だったが、あえて追及はしなかった。 まだ心が追いついていない春日を追い込んでしまうより、逃げ道を作ってやった方が良いと思ったのだ。 何事もなかったかのように春日に笑いかけ仕事の続きを促す。 春日の攻略は高校入学後でも問題は無い。 そう急ぐ必要はない。 時間はまだある。 兄崎は自身に言い聞かせ春日との関係は曖昧なまま高校へと進学したのだ。

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