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【2】おかしい、何かが違う。

春日は兄崎の傍らにうつ伏せに寝転がり漫画を読んでいる。 肌触りの良いラグの上に積み上げた本は書記の五十嵐が書いたものらしい。一冊の厚さは1㎝から1.5㎝程度だ。やけに時間をかけて読んでいる。 春日曰く顔見知りが書いたものだから味わう様に読みたいらしい。 「中等部卒業時に兄妹との合同誌とやらを祝いにくれたんだよな。貰った時は忙しくて中々読めなかったんだけど、勿体ないことしてたな。凄ぇ面白い」 まだ未読の漫画や小説が合計11冊あるから、この会話なき時間はまだ続くのだろう。 兄崎は手持無沙汰になり茶を飲むことで気を紛らわした。お陰で腹がタプタプ言っている。 漫画を読むことは嫌いではない。 寧ろ大好きだ。 ただ互いに干渉せず、独自の世界に入り込み恋人と一緒に過ごす貴重な時間を消費することが酷く惜しいと思うのだ。 ――空気読めよ。春日の馬鹿。 これでは中等部時代に友人として過ごしてきた時と変わらないではないか。 兄崎は不貞腐れた。 もう少し、恋人らしい扱いをしてくれても良いと思う。 春日と兄崎はいわゆる恋人関係となっていた。 春日の攻略は高校進学後、環境が落ち着いてからだ。 そう中学三年の時に考えた。 色々なシチュエーションで何度も脳内でシミュレーションした。 しかし今思えば、冷静に見えていた俺の脳内は意外にも追い詰められていたのだろう。 予想以上に早く、つまりは、兄崎自身が思いもよらぬタイミングで春日に告白をしてしまったのだ。

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