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勝負

「もう、やめろ…って。」 そう言って俺の顔を横に向けさせようと、腕を伸ばしてくる。 その腕を掴むとそのままぐっと頭の上に引き上げて、全体重をかけた。 「うわっ!」 叫び声をあげてソファに倒れ込む。 「いい加減にしろよ!…っん…んぅん。」 再びその唇を自分の唇で塞ぐ。 口を開かせようと舌で唇をなぞるが、頑として開こうとしない。 それなら、と空いている手であごを掴み無理やり唇を開かせる。 カリッと何かが唇に当たった。歯だ。鉄臭い血独特の味が口の中に広がる。 その唾液を相手の口の中に舌と共に押し込む。 掴まれていない手で俺の胸を叩き、足をばたつかせた。 お前がやった事だろう? そう思いながら、鉄臭い唾液を舌に絡ませるとくちゅくちゅと卑猥な音が部屋の空気を淫靡なものに変えていった。 「ふぁっ…んんっ…はぁっん…」 口からもれる吐息が熱を持ち、手は俺の背中を必死につかみ、足はばたつかせるのをやめ、もぞもぞと腰が動き始める。 足を膝を使って少し開かせると、ぐっと一点に力を込めた。 「ひあっ!…っめろって…くぅっ!」 ずっとキスだけで焦らされていた股間が、刺激を受けて我慢できなくなり、外からでもわかる位にパンパンに膨れ上がった。 「お前のキスなんかで起つわけねぇだろう!…だっけ?」 「うるさいっ!これはお前が刺激したからであって、キスで起ったわけじゃなぁああぁっ!」 いきなり股間を握られ、背中が反り返る。涙目になりながら俺を睨んだ。 「ふざけるなっ!うぁっ!…っめろよぉぉぉ。」 初めは威勢よく怒鳴るが、再び股間を掴まれ哀願する。 涙でぐちゃぐちゃになった顔に背筋を悪寒が走り、熱が一点に集まってくる。 むくむくと起ち上がる俺の股間を凝視して青ざめたお前の顔が俺を煽り、再び熱が股間に集まってくるのを感じた。 「なぁ、これって俺の勝ちでいいよな?こうやって起ったんだしさ。」 「くぅっ…っから、握るなっ…て。」 「勝ちでいいよな?いいだろ?」 「だから刺激したから…って何でお前脱いでんだ…って、俺のまで脱がせるな!」 「勝ったんだから、それ相応のモノをもらわないと…な?」 「な…何をする気って、いやそうだっていうのは分かるけれどって、いや分かりたくはないけれど…って、いやそれ凶器だろ?!」 焦りすぎて文になってねーよと笑いながら、 「まぁ、お前が想像している通り、いやそれ以上の事をするつもりではいるけれどな。でも、凶器は言いすぎだろ?」 「言いすぎなモノか…大体、何でそういう話になっているんだよ?!」 半分下着を脱がされた格好で、何とか虚勢を張ろうとしている姿に、ニヤニヤとしてしまう。 「お前が欲しかったものをお前にやるって言ってるんだ。流されとけよ。」 ゆでだこかと思う位に顔が真っ赤になる。 それを隠すように顔を横に向けると、聞こえるか聞こえないくらいのか細い声で、 「流されたら…その先には、何があるんだよ?」 首まで真っ赤になっていくのを愛おしく感じながら、 「お前だけのモノになってやるよ。」 そう言って顔をこちらに向けさせると、再び唇を重ねた。

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