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リハーサル

「また負けたぁぁーーー!」 「このゲームはやり込んでるからな、仕方ないよ。でも、さすがにセンスいいよな。もう少しやったら、多分勝てるようになるんじゃないか?」 「…。」 「どうした?」 「そうやって、人のことをうまく煽ってくるよなぁってさ。ついそれに煽られてやっちゃうし頑張っちゃうんだよなぁ。」 「それはお前にそれだけの力があるってわかっているからさ。」 「はぁ。ほんっとうに無自覚やばいわ。」 「何だよ、それ?」 「前にクラスの女子が話していたんだよ。」 「へぇ?」 「あー、やだやだ!おもてになられる方は。女子が自分のことをどんな風に話してても、気にもしなくていいんだもんな。悪口なわけがないってさ。」 「別にそんなんじゃないよ。ただ気にはしないって言うのは合っているかな。」 「やっぱりな!」 「お前は、女子にモテたいのか?」 「そりゃあさ、お前みたいとは言わなくても、一人かふた…いや、やっぱり一人でいいや!その子にずっと好きって思われててさ、こっちもわかっているけど黙ってて。で、ある日二人きりになった時にさ、こう告白されそうになるのを、知ってた。俺も…だよとか言いながらキスとかさ…くぅぅっ!いいよなぁ。」 「夢見る少女か⁉︎」 「あのなぁ、こっちはお前みたいに選り取り見取りじゃないんだからさぁ。一回のチャンスに夢みたっていいだろ…ったく、モテるやつはいくらでも次があるからやり直しがきくけど、俺みたいなのは一回に全力注ぐんだよ!失敗は許されないの!一発勝負はキツいよ、リハできるもんでもないし…」 「リハか…やってみるか?」 「何の?」 「だから告白され…ん?さっきのだとお前がするのか? まぁ、どっちでもいいわ。 俺が相手になってやるよ。」 「はぁ?!お前みたいなゴツイの相手にリハって、無理が過ぎるだろ!ないない‼︎」 「キス…」 「え?」 「キスはしたことあるのか?」 「な…何だよ、いきなり!」 「したこともないのに、リハもしなくてうまくできるのか?って話だよ。」 「そ…そんなの、やってみなきゃわかんないだろう?」 「失敗できないんじゃなかったのか?夢見る男子学生君は。」 「それはっ!…そうだけど。」 「丁度、今夜は親も帰ってこないし。リハーサルに付き合ってやるから、泊まっていけよ。」 「うぅ…。やっぱり、リハっていうか、準備って大事だもんなぁ…わかった!今夜はとことん頼むわ!」 「あぁ、とことん教え込んでやるよ。お前に俺の色々を…な。」

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