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第26話

「あ゛っ、〜〜っっ!……っ」 「……」 「煌、もう代わってー。」 クロの匂いが一際強くなる。その匂いに誘われて欲望が尽きない。どれだけ食べても欲しい気持ちが抑えられない。クロがガクリと震えるのがまた欲を誘った。次に入ろうとすると、柊が横から割り込んでくる。そしてぐったりとしたクロを引きずり、柊が入れる。 「………」 微かに、腹が立つ。俺のものなのに。 しかし元々こうなったのは自分が下らない意地をはったせいで、自業自得でもあった。 「そういえば、あっちはどうだった?継承の準備は順調?」 「あぁ。順調だ。」 「ふーん…。順調かぁ〜。」 冬夜が自分から探りをいれて、残念そうにする。まぁ、そうなるだろう。俺が正式に王位を継いだら、クロは完全に俺だけのものにするつもりだ。こんなふざけた共有は終了だ。冬夜はそれに勘付いているから気にしているのだろう。 「ねー、もし継承しても…」 ピーンポーン… 冬夜が言い掛けたところで玄関の呼び鈴が鳴った。 「煌が継承しても…」 ピーンポーン ピーンポーン… 「その後も」 ピーンポーン ピーンポーン ピーンポ「あ゛ーー!!うるせーなっ!」 「…しつこいな。」 しつこく呼び鈴がなり、数度、冬夜の話が遮られた。それに腹を立てたように、冬夜が立ち上がる。 「また、クロのお迎えかー?!とにっ、しつけーなっ!」 「……」 俺はちらりと、クロが持っていた薬をみた。数個、飲んだ後の避妊薬。 ---- 「……!」 「……」 俺は玄関の扉開き、僅かに息を呑んだ。そして瞬間に悟った。こいつだ。クロに手を出したのは。こいつには前にもクロを捕まえる邪魔をされた。俺と全く同じ顔の男。 「……」 「……」 暫し、お互い無言で睨み合う。にしても無表情な男だ。 『ふっ、あ゛、〜〜っ!やっ、もっ、ん゛……っ、できなっっ!…っ、お、終わりっに、してっっ!やっ、あ゛っ、〜〜っ!!』 静かになると、部屋の中からクロの泣き言が聞こえてくる。その声に男はピクリと反応したが、また直ぐに最初の無表情に戻った。 「……何をしている。」 「輪姦。」 「…ふぅん。」 「……」 変な男だ。お前が、クロとしたんだろ?わざわざこんな所まで来る位に入れ込んでいるんだろう?そのクロのこの声を聞き『ふぅん』の一言。しかし、もっと変なのはこの空気だ。顔が似てるだけじゃない。本当に自分を前にしたような、不思議な感覚があった。 「お前はこんな事がしたいのか?」 「あぁ?」 「お前は俺だ。お前の望みは分かる。」 「はっ、俺は全然わかんねーな。」 「…」 本当は分かる。男の言わんとしている事も、こいつが俺だという事も。 「鬼塚玲次。俺の名前だ。」 鬼塚 玲次…。クロのスマホに何度も連絡をしていた奴。 「だから、なんなんだよお前。」 「クロに俺の名前を言ってみろ。」 「……」 ああ、やっぱりな。最初からそうだった。 「そしたらクロは…きっと何でもしてくれるだろうな。」 名前しか知らなかったが、何故か気に食わなかった。 「お前を思ってじゃなくて、」 「……」 やっぱり、直接会っても、腹が立つ奴だ。 「俺の為にな。」 「……」 玲次とか言うこの男は、そう言い切ると、口の端を歪めて俺を見下すように笑った。 「俺はお前の願いについて、ゆっくり話がしたい。これが俺の連絡先だ。」 そう言って、玲次は勝手に俺のポケットに名刺を入れた。 「1人で来い。他の2人が居たら、お前の願いは叶わないだろう?」 「はっ、誰がお前の思い通りに動くかよ。」 俺はそう吐き捨てた。しかし玲次は依然として動じず、ただ笑うだけだった。 ----- 「あ、煌ー、お帰りー。どうだった?保健医?」 「……気にする程でない。」 「ふーん?」 部屋に戻ると冬夜が尋ねてくるが、俺は適当に受け流した。冬夜は何か言いたげだが、それ以上は聞いてこなかった。 「やだっ、……っ、に゛ゃっ〜〜〜っ!もっ、やだっっ!!」 「はぁっ、クロ、かわいっ、好き、すきすきっ、」 声の方を見ると、依然として勢いの治らない柊に覆いかぶされ、クロが犯されている。大柄な柊に覆いかぶされ、クロは足しか見えない。そのクロの足がガクガクと断続的に震えている。 「……」 こちらに来て、クロの誘うような匂いが更に強くなった。それにバースの変化のせいか、感度も上がっているようだ。クロの側にいると止まらなくなる。柊も同じことを感じているんだろう。 「柊、変われ。」 「…んー、じゃあクロ、お口。」 「ん゛ーーっ、」 俺が座りその上にクロを乗せ、下から突き上げた。クロが喉元を見せて、呻いた。柊が脇からクロの顔を引き、キスをしている。 くそっ、こんな、匂いをさせて…。 「おいっ、ろくに謝罪も出来ないくせに、やけによがるよな、お前。」 「ん゛ん゛っ!!はぁっ、」 上気した顔で、クロが悩ましげに眉を寄せた。 玲次の顔が浮かんだ。 アイツにもこんな風にさせて…そんな顔を見せたのか? 「………鬼塚 玲次…」 「!!」 ほぼ無意識だった。俺がその名前を呟くと、クロは弾かれたように俺を見た。そんなクロを見て、俺の中でざわざわと、不快な波が立つ。 「そいつにも、こんなふうにさせたのか?」 「あっあっ、あっ………ちっ、ちがっ……」 それまで熱に浮かされていたクロの顔が一気に正気に戻る。なんだその顔。俺の不機嫌を察知してか、クロはあからさまに焦った様子を見せた。

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