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亜利馬、職業AVモデル・6
「……亜利馬は、デビューの時からそういう感じだったから、仕方ないよ」
「そうだけどさぁ」
その夜、俺は同じ寮内の401号室──大雅の部屋で布団に転がりながら意味なくじたばたしていた。俺の部屋は504号室、隣の505は獅琉の部屋だけど、こうして愚痴を言う時はいつも同い年の大雅に付き合ってもらっている。
大抵俺が愚痴っている間に大雅は自分のベッドで寝てしまうけれど、今日は遅く起きたのか珍しく零時を過ぎても目がぱっちり開いていた。
「それに、亜利馬はウケ専でしょ。どうしても需要は偏る」
ウケ専とは同性同士のセックスにおける「ネコ役」、つまり相手のペニスを受け入れる側だけを担当しているモデルのことだ。同じような意味でタチ専というのもあって、竜介なんかはどんな企画でもタチ役──挿れる側専門のモデルとして活動している。
ちなみにいま目の前でゴロゴロしている大雅はタチウケ両方できるモデルだ。リーダー獅琉とヤンキー潤歩も、企画に応じてタチウケどちらにでもなる。三人ともタチとウケで全く違う顔を見せることのできるモデルなのだ。かといって竜介が我儘を言ってウケ役を拒否している訳ではない。ファンは皆「タチの竜介」が見たいから、それに応えているだけだ。
需要があるから供給している。そうなると俺がウケ専であることも、ファンには需要がある訳で……。
「大雅はデビューの時からタチウケやってたんだっけ?」
「ううん。俺も始めはウケ専だった。竜介と絡む時以外はタチでいこうと思ってたんだけど、……俺、性格的にタチ向いてない」
「どういうこと?」
「亜利馬と絡むのは好き。だけど、その頃は他のモデルと絡むのがちょっと嫌だった。タチだとどうしても自分がリードしなきゃいけないでしょ。俺、そういうの上手くできないから」
「……そっかぁ。確かに特殊な企画じゃない限りは、良い絡みが撮れるかどうかって、タチ役に懸かってるもんなぁ。ウケの子がどういう感じ方するかとか、どういう持って行き方すれば自然に気持ち良くなれるかとか、実は皆考えてるもんね」
それが上手い男だからこそ、竜介はタチ専で人気を博しているのだろう。
「亜利馬はウケ役の方が魅力が出るから、会社もウケ専で売ってるんだと思う。それに亜利馬がウケ専になってくれてるから、ブレイズも上手く回ってるし……有難いって思ってるよ」
「そ、そうかなぁ」
身を起こしてベッドに顔を乗せると、大雅が俺の額にキスをしてくれた。
「亜利馬はブレイズに必要なメンバーだよ。自信持って」
こういう時に大雅が見せる控えめな笑顔が大好きだ。可愛くて優しい俺の聖天使。早く竜介と幸せになってくれと心から思う。
「……へへ、ありがと大雅」
俺のブレイズでの役割が本当に「やられ役」なら。俺がそれをすることでメンバーの役に立ち、ブレイズがより一層高みを目指せるなら。
「今の俺は、もらった仕事を頑張るしかないもんな!」
「うん、俺も頑張る。色々決まったら一緒に練習しよ」
「了解!」
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