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亜利馬、正真正銘己との闘い・3
「おおお、これが山野さんが言ってた亜利馬ドールかぁ! てっきりフィギュアみたいなものかと思ってたら、リアルドールなんだね!」
翌日になってバッドアリスから届いた俺のドール、アリマ一号。今は会議室の中央、テーブルの上にすまして座っている。
「うっげ、何か趣味悪いな……似過ぎてて気持ち悪りぃ……」
「眉毛に睫毛も、一本一本植えられてるんだろ。目玉はガラス製か」
その完成度の高さ、そして「借り物」であるという緊張感のせいか、俺達は誰もソレに近寄ることができない。
「………」
こうして見ると本当に俺そのものだ。何だか今にも瞬きするんじゃないかと思ってしまう。
とにかく存在感が凄まじくて遠巻きに見ることしかできない俺達に、山野さんが言った。
「触ってみてもいいぞ。先方からは好きにしていいと言われているが、一応、借り物だから丁寧にな」
「じゃ、じゃあ俺から行きます……」
恐々近付いて、その手を取ってみる。シリコン製とは言っていたけれどすべすべで陶器のような肌だ。当然だけど俺よりずっと綺麗だし、ほんの少しだけリアルドールに惚れてしまう男の人の気持ちが分かった……気がした。
「なあ、ちょっと服脱がせてみろよ」
後ろから潤歩に言われ、俺は真っ赤になって叫んだ。
「そんな変態的なことできませんっ」
「何言ってんだ、お前コイツとヤるんだろ。筆おろしの相手だぞ」
「う」
そうだ、俺はこのドールと……しかもそれを撮影されるんだった。
「い、嫌だなぁ……セックスのためのドールっていうことは分かるんですけど、これ使う姿って決して人には見せないものじゃないですか」
「だからこそエロいんだろうが。どけ、俺が脱がす」
潤歩が俺の前に割り込んで、ドールが着ているTシャツを捲った。
「………」
潤歩の背後から、四人でそれを覗き込む。
「……すっごい。綺麗だね」
獅琉の呟きが漏れるのも無理はない。ドールの体って初めて見たけれど、こんなに綺麗なものなのか。肌は透き通るようで、胸や腹の薄い筋肉も再現されていて、薄いピンクの乳首も本物のそれにしか見えない。
「これ、見た目は亜利馬そっくりだが……ボディや肌の質感なんかは逆に人間ぽくはないな。理想が詰め込まれ過ぎているというか」
竜介の言うことも尤もだ。人工だからこその美しさ。美し過ぎて観賞用には良いかもしれないけれど、これとセックスして満足できるものなんだろうか?
「ちょっと失礼」
獅琉が人差し指でドールの乳首を押した。
「ど、どうですか?」
「すっごいぷにぷに。本物っぽい」
「おい、俺にも触らせろ! ……お、おお、おおお?」
「凄いでしょ! 触り心地は亜利馬の乳首と同じだね」
大の男が人形の乳首を摘まんで感動している。その異様な光景にツッコミを入れようとして止めたのは、俺は後日「コイツともっとエロいことをしなければならない」ということを思い出したからだ。
「……下も再現されてるの」
大雅がぼそりと呟いた瞬間、俺達四人の動きがピタリと止まった。
「………」
「……だ、だめ! 絶対だめです! それは見たら駄目ですからね!」
「何で? いいじゃん別に、亜利馬のなら見慣れてるし、どうせ見ることになるんだし」
「駄目です獅琉さん! こ、これは一応その、有栖の体がモデルになってるから……!」
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