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亜利馬、ぶるぶる
火曜日、秋風が吹きすさぶド平日の朝。午前七時。
今日は月に二回配信される、ブレイズ公式チャンネル「@ブレイズ」の撮影日。
撮影班のワゴンに乗って辿り着いたのは、神奈川県にある大きな公園だ。カラフルな遊具がたくさんあって、午後になると近所の子供達が大勢遊びに来るという。だから一番人が少ないこの時間帯を選んで来たわけだ。
「流石に寒いわ。もう既に帰りてえんだけどォ」
潤歩が文句を言う隣で、獅琉は満足げに目の前の遊具を見ている。
「どれも可愛いね。公園の遊具って危険だから撤去されてる所が多いって聞いてたけど、ここはたくさん残ってるんだね」
回転式の丸いジャングルジム。両側に二人ずつ乗れるシーソー。大勢でも一緒に滑れるワイドな滑り台。ターザンみたいに掴まって滑空するロープウェイ。動物の形をしたスプリング遊具。もちろん定番のブランコやうんてい、タイヤの道にトンネルドームもある。
「亜利馬、子供の頃にこういうので遊んだことある?」
「い、田舎者だからって馬鹿にしないでください。……ちょっとならありますけど」
それから俺達は一旦山野さんの元に集まり、今日の説明を受けた。といっても内容は簡単なもので、いつものように好き勝手遊びながら五人で楽しむというものだ──表向きは。
「筋肉痛になりそう」
「あんまり無理するなよ大雅。怪我したら大変だからな」
ピンマイクを付けてもらいながら、不安げな顔をしている大雅の頭を竜介が撫でる。
「あのデカい滑り台、俺のだからな! 俺が一番最初に滑る!」
「ガキ大将だね、潤歩」
潤歩と獅琉にもマイクが付けられる。
「亜利馬くん、お願いします」
そうして動画班の撮影スタッフに呼ばれて、俺だけ四人からさり気なく離れた。敷地内の駐車場へ行き、スタッフのケンさんと一緒にワゴンに乗り込む。
「ああ、怖いなぁ……大丈夫かな」
「頑張ってね、亜利馬くん」
今回は「ほのぼの公園プレイ@ブレイズ」。表向きはそうなっているけれど、実は裏ではとんでもない企画が同時進行で行なわれることとなっている。
「はい、お尻出して」
「うう……」
それは「尻にローターを仕込んだ俺が、どれだけ他のメンバーに気付かれず一緒に遊べるか」というものだ。時間まで全員に気付かれなかったら俺の勝ちで、嬉しいことに金一封として一万円分のプリペイドカードが贈られる。だけどメンバーのうち誰か一人でも気付いてしまったら俺の負け。カードは初めに気付いたメンバーの物になる。
「いつも俺ばっかこういうの……」
「亜利馬くんの役目だよね、こういうのは」
ケンさんにローションを塗ってもらい、小型のローターが俺のそこに「つぷっ」と挿入される。
「あう」
「大丈夫? 痛くない?」
「だいじょうぶです……」
ワイヤレスで遠隔操作もできるローター。操作するのは撮影アシスタントのリョウさん。ケンさんがカメラを構える横でアシストしつつ、ランダムでリモコンをポチっとするという手筈だ。
「事故に繋がるのだけは避けたいから、なるべく亜利馬くんの体がしっかり安定してる時にスイッチオンするね」
「うーん……あ、でも大丈夫そうですよ。この程度だったらいつでもバイブしてもらっても、冷静でいられると思います」
「おや、珍しく自信ある?」
「あります! 絶対一万円もらって、コンビニで豪遊するんです」
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