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男子高生『レオ』

 男子高生の『レオ』の設定は色々だった。  真面目な進学校に通っている子だったり、崩れた感じの遊んでいる子だったり。そのあたりは買ってくれる男の趣味に合わせていた。  まぁ、大学に入ってすぐ髪を染めていたので『ちょっと遊んでる子』の設定でいくことが多かったけど。俺の外見が華やかなために、そっちのほうが自然に見えることも手伝って。  制服は高校時代に着ていたものを使っていた。都内の高校でないので、別にバレやしないだろう。バレたところでとっくに卒業してるから関係ない。  ネットで買った、偽の制服だとリアリティがないしな。それなりに着こんであるように見えるほうがいいし。  俺は『レオ』として過ごすときは大概カラコンを外していた。真面目な設定でいくとき以外は、大抵。  瑠璃色の瞳、茶色の髪で「ハーフなんだ」「俺、綺麗でしょ」なんてちょっと盛った設定で生意気ぶって、ちょっとした非日常感を出すことができる。  そういう意味ではこの特殊な瞳すら商売道具にしているといえた。  生まれ持った大切な瞳まで、と思わなくもないが、体を売っている時点でもうなにも変わりやしない。それなら最大限に生かすだけだ。  客を探すのは簡単。ネットでゲイ向けSNSや、ツイッターでソレ専用に作ったアカウントでの検索や募集なんかで簡単に捕まった。  それはもう、ちょっと人恋しいな、なんて思ったときにアクセスすれば大概捕まるくらいに簡単だった。  初めて自分を『体を売るオトコノコ』として作るときはちょっと悩んだ。  『レオ』という名前はシンプルに本名の『璃緒』をもじっただけだ。名字なんて要らないし、聞かれたら適当に偽名でも言っておけばいい。  男子高生設定にしたのは、そのほうが売れるからだ。この顔も体も、今ならまだ男子高生で通るんだ。それならその設定のほうがいい。  若いなら若いだけ高くなるんだし。かわいがってもらえるんだし。  二枚が相場らしいところを、図々しくも『三枚から』なんて高めの値段をつけていたけれど、それでも買うやつは惜しまなかった。  そもそもあまり安売りするのも良くないのだと、そういうちょっとよろしくないサイトには書いてあった。  安かろう悪かろうというのは、援交にも適用されるのだという。  あまり安い値段をつけると客の質も落ちるとか。金の余裕は心の余裕とかで、そのほうがマトモな客に当たれる可能性が高いそうだ。  そして俺は紙幣三枚に匹敵する顔と体、性格や接客をしている自信はたっぷりあった  とはいえ、高い値をつけても別に代金としてもらうその金は、それほど欲しいというわけではなかった。  そりゃあいい服も好きなCDや専門書もたくさん買えるんだから、金なんてあればあるだけ嬉しくはある。けれどあまり派手に使ってオヤや友人知人にバレるわけにはいかないから、俺はちょっと贅沢する以外のほとんどをクローゼットの底にある箱に突っ込んでいた。  銀行に預けようにも、まだ大学生だから口座を開設するのも面倒だ。なにかの拍子に通帳やらが見つかってしまっても困るし。  大学一年の終わり頃からはじめて、今、俺は三年生。  季節は秋。そろそろ丸二年になろうか。  大学卒業するくらいになったら『レオ』を別の設定にしないとかなぁ、と最近思うのだった。  いくら俺がクオーターで、瑠璃の瞳を晒せば若干、年齢不詳に近くなろうとも、社会人になってまで高校生と言い張るのは無理があるだろうし。  次は大学生ってことにすればいいだろうか。一段階あげるだけだ。それでもまだまだ若いオトコノコの部類。紙幣は減らさなくたっていいだろう。  でも、まぁ。  もうしばらくは高校生設定を楽しんでおくかと思うのだった。  それに制服はいい。  『レオ』をどこか客観的に見られるような『仕事着』になってくれるから。

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