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『レオ』の生まれた日②
『はじめて』は勿論、高く売った。
ハグしてほしいだけ、なんてそんな都合いい話、あるわけがないから。
体を差し出して、代わりに抱きしめてもらったのだ。
はじめて、を買ってくれたのは中年に差し掛かった男だった。
ハタチにもならないオトコノコのバックヴァージンなのだ。紙幣五枚以上を要求したし、実際七枚ももらった。満足してくれたようだった。
見た目も悪くなかった。メタボなんてこともなかったし。
それを重視して選んだんだけどな。写真を見て、できるだけ玲也に体格が似てるやつ、なんて。顔より年齢よりそっちのほうが重要だった。
幸い、いいやつだったようで優しくしてくれた。ぐぐるやらして一応どんな流れであるとか、気をつけることとか、そういうことを調べておいて、実際に尻に自分の指を入れて試してみたことはあった。
が、実際に男のものを突っ込まれるとなったら、そんなものは比較にもならなかった。情けない姿など晒したくなかったので必死に耐えたが。
多分望まれていただろうから、かわいらしく「痛い」と悲鳴を上げて訴えはしたけれど、そんな演技台詞よりはるかにつらかった。尻が裂けるかと思ったくらいだ。
非常につらかったけれど、でもそれは俺にとってとてもいいものだった。
良い妄想ができたのだ。これは女の子ではできないものだった。
女の子相手では、当たり前のように俺は『抱く側』だったから。こういう仕事では、『抱かれる側』になるほうがはるかに多いものだ。
はじめての行為のさなか。
俺は『はじめてを玲也に捧げた』という設定の妄想をした。想い合って、抱いてもらった妄想は、俺の胸に悦びと悲しみを同時にもたらした。
けれど、悦びのほうが上回ってしまった。
代替の行為として最高だと覚えてしまった。
それ以来、俺はそれを『仕事』とすることとなる。
はじめようと思った動機のとおり、腕にハグしてもらったし、それを気持ち良くも思った。男のがっしりとした胸を、目を閉じて玲也のものと妄想すればやはり悲しみはあったが、確かに安心感や嬉しさもあったのだから。
それ以上に、体を愛してもらうこと。
たとえ気持ちが無くても、体を触れさせて繋げること。嬉しすぎて涙が出た。
こういうときは、泣いたって不自然ではないのだ。
「寂しいから体を売ってる」なんて本音を吐いたところで、向こうもそういう設定だと思い込んで、喜んでくれるだけだから。
「じゃ、紛らわしてあげよう」なんて、優しくハグしたり激しく抱いたりしてくれた。win-winだったのだ。
だから俺はそれを仕事として定着させてしまった。
まだ大学一年生の終わりだった。
十九歳。
俺はとっくに卒業した高校の制服を着て、男に買われる高校生のオトコノコ、『レオ』になった。
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