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空っぽの夜
夜が巡る。夜が巡る。無為な夜が巡る。
はじめの二日は寝て過ごした。
次の一日は考えた。
その夜からは、動いた。男の腕におさまるための行為を。
「こんばんは。レオです。よろしくお願いします」
仮住まいのホテルの、別の部屋。こんこん、とノックして部屋のドアの前でにこっと笑う。
ホテルだけを指定して、客に部屋を取ってもらった。別に俺がここに仮住まいしているなどとは思わないだろう。
自分の取っている部屋に入れる気はなかった。一応、鞄にはここまで体を売ってきて得た金がたっぷり入っているのだ。
俺にそれなりの金額を払うような客だ。手癖の悪いやつに当たる可能性は低いだろうけど、ゼロじゃない。念には念が必要だ。金がなくなれば逃避行だってできなくなってしまうから。
「今日平日だけど、学校休み? それとも一回おうちに帰ってきた?」
制服なんて持ってこなかったから、俺は普通の私服で客の部屋を訪ねていた。取りに帰るつもりもないし。
「んー、もう冬休みなんです。最近はけっこー、冬休みって早いんですよ」
そんなことはあるはずがないが、適当なことを言っておいた。
「そうなんだ」
客はあからさまにがっかりしたようだ。
「制服のほうが良かったですか?」
「そうだねー、やっぱり高校生らしいじゃん」
まぁそっか。援交目的のオジサンとしては、いやらしくはあるが当然の願望だったはず。その点はサービスしてやれなくてちょっと申し訳なくなる。
「すみません。次回呼んでくれたら着てきますね」
なのでウィンクしておく。
次があるかはわからないけど。いや、多分無いだろうけど。
「夕ご飯食べてきた?」
「まだなんです」
招き入れられながら会話をする。俺の住んでいる部屋よりだいぶ広かった。ベッドもダブル以上かもしれない。
「そう、お腹空いたでしょ。なにか取ろうか。ルームサービスとか」
「えっいいんですか? えー、じゃあ甘えちゃっていいですか」
別に食事の金をケチりたいわけじゃなくて、食べている間に少しでもコイツの人となりを知りたいだけだ。『仕事』に役立つから。
ある意味、時間稼ぎ。いきなり本番に挑むよりちょっとは安心できる。
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