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第1話
「んっ……あっ……はっ……」
逆上せた舌先が絡み合い、くちゅくちゅと音を立てる。
押し込みきれなかった唾液が溢れ、乾いた顎をしっとりと潤した。
「理人 さん……」
「ん、俺も……」
――したい。
同じ思いを、リズムの異なる呼吸に乗せて伝え合う。
もう一度唇を吸い、ゼロよりも近かった距離はようやくプラスになった。
「準備、してくる」
節目がちになった理人さんの長いまつ毛が、揺れる。
躊躇いながら遠ざかっていく背中を見送っていると、ふとその動きが止まった。
理人さんの視線がこちらを向き、もっこりと膨らんだ俺の股間を捉える。
僅かに見開かれたアーモンド・アイは、すぐに蕩けた。
「興奮するな、変態」
いや、するでしょ。
最近の理人さんは、けっこう積極的だ。
三回に一回くらいは自分から仕掛けてくるようになったし、気がついたら俺の上に乗ってることも多いし、「ここ、触って……っ」とか、「もっとぉ……」とか、「あ、や、やだっ、やめないで……!」とか。
今だってきっと、勢いよく降り注ぐシャワーの下で「んっ……んっ……」とか言いながら自分でそこを解しているのだ。
興奮しないわけがない。
「よし、久しぶりに遊んでみるかな」
昂ぶる息子のことは一旦忘れることにして、クローゼットの奥に手を入れ秘密のボックスを探し当てる。
「うーん……」
誕生日プレゼントのエネマグラは当日の夜に使いまくったばっかりだし、ほかの大人のオモチャもそれなりに使い尽くしたし、アナル洗浄は理人さん本気で嫌がるしなあ。
まだ一緒にしてなくてしてみたいことと言えば、乳首の開発……だけど、理人さんの乳首はもうすでに開発済みだ。
理人さんは乳首が弱い。
ものすごく弱い。
指先でちょっと摘んだだけで「ん……っ」って喘ぐし、指の腹でこねくり回そうものなら、あれよあれよと下半身が元気になるわ、先っぽからトロトロいやらしい雫は漏れるわで。
でもそれは俺じゃなくて、あの男――木瀬 航生 の努力の賜物だ。
俺は理人さんの〝ハジメテの男〟じゃない。
仕方がないことだと分かっていても、その事実は忘れた頃にふよふよと蘇ってきては、心の深いところで悶々と燻り続ける。
俺だって、理人さんの〝ハジメテの男〟になりたかった。
まだ誰も触れたことのないところに初めて触れる男になりたかった。
快感の「か」の字も知らない理人さんの乳首を虐めに虐めて、乳首への刺激なしではイけない身体にしてやりたかった。
そんなはしたないことばかりを悶々と考えていたからだろうか。
「なんじゃこりゃああああぁぁぁッ!?」
まさか、こんなことになるなんて――
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