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第2話
十分後――
「ちょ、待っ、佐藤くん、待って……!」
理人さんが慄いていた。
パンツ一丁で。
「ひっ……! や、やめろって……!」
ひょろ細い腕が伸びてきて、俺の胸板を一生懸命押し返そうとしてくるけれど、ほとんどなんの圧も感じない。
「うわ、手まで小さい」
「あ、当たり前だろ! 高校生になってんだから!」
そうなのだ。
なんと、理人さんが高校生(推定)になってしまった!
長い手足の比率はそのまま、身長がくちゃっと縮んでしまったのだ。
綺麗なアーモンド・アイも、なんとなくその形がいつもより丸みを帯びているし、いつもは色素の薄い髪が、黒々と光っている。
ひくひくと痙攣する胸板は薄っぺらくて、その上にちょこんちょこんと鎮座したふたつの薄紅色の果実は、あまりに未熟で幼い。
全体的に、なんというか、本当に……
「かわいい……!」
こういう展開の場合、大抵は記憶も一緒に退行して「だ、誰ですか……?」なんてことになってしまうんだろうけど(それはそれでちょっと美味しいのは否めない)幸いにも理人さんの記憶はそのまま。
ただ身体だけが、突然若返ってしまったらしい。
「んっ……」
唇を押し付けると、小さなうめき声とともにすぐにその門が開かれた。
奥の方に逃げてしまった滑りを求め、口内を探る。
うわあ、舌まで小さい……!
ざらりとした感覚はいつもと同じで、でもその質量がいつもと明らかに違う。
ああ、だめだ。
ものすごくいけないことをしている気分になってきた。
「んふっ!?」
荒い鼻息を抑えきれないまま下半身に手を伸ばすと、まん丸の目が素早く瞬いた。
「や、やめろって!」
「なんで?」
「当たり前だろ! そもそもどういう状況だよこれは!?」
「神様が俺の願いを叶えてくれたのかもしれません」
「は? 神様? 願い? ……って?」
「さっきまで、高校生の理人さんに会ってみたいってお願いしてたんです」
「は……?」
「理人さんの〝ハジメテの男〟になりたい」
「は?」
「理人さんの乳首を開発してみたい」
「はあ!?」
理人さんは、ズザザザザザッと狭いベッドの上を後ずさ……いや、尻ずさった。
そしてシーツを引き寄せ、自分の身体をすっぽりと覆ってしまう。
うーん、初々しい!
「いや、最後のおかしいだろ!」
「おかしくないでしょ。乳首で感じる理人さんを見る度にかわいくてたまらなくなりますけど、同時にものすごく嫉妬してる自分もいるんです。どうしても木瀬さんの影が散らついて」
「そ、それはっ……」
「意地悪で言ってるわけじゃないんですけど……」
「わかってる! でも……俺はその、そもそも航生のことなんか、これっぽっちも考えてないんだぞ!」
「そうなんですか?」
「だ、だって、今俺の、ち、乳首を気持ちよくしてくれてるのは佐藤くんだし、俺は佐藤くんが好きだから、佐藤くんが、ち、乳首弄るたびに佐藤くんが欲しくなるし、いつもそうなったら、さ、佐藤くんのことしか、考えられなくなるし……」
「理人さん……!」
「わ、わかったかよ」
「わかりました。でも……」
「ふあっ!?」
「据え膳食わぬは男の恥……って言うし?」
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