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第七章・7

 町の市場を仲良く連れ立ってひやかす二人。    野菜やら魚やらを楽しそうに選ぶその姿は、恋人同士と言ってもまるで不思議のない睦まじさだった。  以前隠した紙切れは、きっとあの女からの恋文だったに違いない。    そんなことを考えながら、ヴァフィラは時が立つにつれ胸に冷たいしずくがどんどん溜まってゆくのを感じていた。  買い込んだ食材を抱えて、ルドーニの私宅へと消えた二人の背中を見送った時、冷たいしずくは胸からあふれ体中に流れてヴァフィラを凍えさせた。  部屋に招き入れるまで、あの女はルドーニと親密になっているのだ。  うなだれて、ヴァフィラは自宅へ戻った。

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