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第八章・6

 勢いよく開けられた表戸の向こうから、温度の違う空気が流れ込んでくる。  室内の甘い安らぎをかき回し、賑やかな空気が流れ込んでくる。 「ルドーニ、来てたのか」  早かったな、と言いながら、ヴァフィラはたくさんのジャガイモの入った籠を掲げて見せた。  返事をするのをためらったのは、部屋に入ってきたのがヴァフィラだけではなかったからだ。 「どこに置こうか、ヴァフィラ」 「あぁ、キッチンの方へ頼む」  背の高い、たくましい男。  年のころは、俺よりちょっと上か。  山ほどのジャガイモを軽々と運ぶその腕には、しっかりとした筋肉が盛り上がっている。  日に焼け、明るく健康的な印象をいくぶん和らげているのは、長く伸ばした波打つ髪のせいか。  誰だ、こいつは。  キッチンへと消えた二人に、ルドーニの心はざわついていた。

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