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第十一章・27
朝食の食卓には、昨日のオレンジ色のバラが飾られていた。
しかしそれを見ても、もうヴァフィラの胸は疼きはしない。
バラの花が嫌いだとは思わない。
まぶしく輝く、ニコルス先生との思い出の日々。
苦しかった別れ。
別れを思うと、まだ心が痛む。
傷は癒えてはいないのだ。
でも、その痛みを分かち合ってくれるという人が、私にはいる。
「おまちどおさま。さ、食べようぜ」
ボウルいっぱいのサラダを持って、ルドーニがやってきた。
その笑顔に、ついこちらもつられて微笑む。
「しかし、どうして先生はお前にオレンジ色のバラの花言葉を託したのだろうな」
「ぅん? それはやっぱり人を見る眼があった、ってぇことだろ」
しばしばお茶の席に呼ばれていた、ルドーニ。
その少年の人となりを見て、ニコルスはヴァフィラの将来を託したに違いない、とルドーニは胸を張った。
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