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白き灰がちになりてわろし 1
本編27・28話に出てきた、シュンのお友達視点。
お友達の中での、シュンのお話。
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高校に入って俺――吉賀沢公 と寮の同室になったのは、関春暁 という名前でスッとした立ち姿で、人好きのする明るい男。
俺とは遠いところにいるように感じられて、胡散臭いなって、正直思っていた。
「いとーくん、もういいだろ? これ、連れて帰ってよ」
「これ? ひどい、これってないでしょ!」
これと言われたのは上地俊明 という同級生で、男子校あるあるなのか知らないけど、そのかわいい系の見た目と陽気な雰囲気でクラスの中心でかしずかれている男。
かみぢひめ、略してカミヒと呼ばれているこいつは これまた男子校あるあるなのか何なのか、ハルボンと呼ばれる関に惚れているのだという。
そのハルボンは、うんざりしているのを隠しもせずにカミヒを連れて帰れと言ってよこすので、俺はにっこりと笑って見せる。
そしたらもう、これ以上ないってくらいに、ふかああい溜息をつかれた。
「言ってないだろうな?」
溜息ついて沈み込んだままの姿勢で、念を押してくるから、やっぱり俺は笑顔を返す。
「何を?」
「ハルボンの由来。よけいなことまで言ってないよな?」
「よけいなことが何かはわからないけど、さっきした以上の説明はしてないよ。『お前はどこの坊ちゃまだ』って先輩が言ったから、はるあき坊ちゃん、略してハルボン」
ちって行儀悪くハルボンが舌打ちをした。
「言うなよ」
「もう、言う機会なんてないでしょ」
舌打ちとか、念押してくるときの目つきの悪さとか、低い声とか、普段見せている姿とはかけ離れていて、驚いた。
君、そういう人だったんだねえ。
長居してもろくなことにならないだろうから、念を押してくるハルボンはそのまま放置して、カミヒを引きずって帰ることにした。
寮に帰るバスで、カミヒはうんざりするほど落ち込んでいる。
ぶーさんに接しているハルボンがいつもと違って格好良く見えて、その格好良さに本気度がうかがえたんだそうだ。
「ハルボンの大事な人を見たら、それでいいって言ってたくせに」
「いいって言ったけど、落ち込むもんは落ち込むじゃないか。ホントに宝物みたいにしてんだもん」
「大事だって公言してるんだから、そりゃあそうするでしょ」
うだうだぐずぐず言い続けるカミヒに、溜息ひとつ。
自分で傷口に塩を擦り込みに行ったくせに、って。
それにしても、あのハルボンは面白かった。
いつもの胡散臭い爽やか君はどこに行ったんだい? って聞いてしまいたいほどに、面白かった。
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