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同居人は料理が美味いけど、俺は料理を食べるのが上手い(3)
盛山は比較的真面目な性格であった。そして、細川もそうだったのだろう。
学園祭の作業ではお互いに週一回以上顔を見かけていたし、人が少ない時間帯には先輩以外にこの二人しかいない、という状況にも何度か陥った。物資を運びだしたり、販促物の作成も一緒に行うことが多くなり、会話も増えていった。
作業に顔を出せない時、二人だけで少し早い晩御飯を食べることもあった。細川はデザートやサイドメニューを頼むだけだったが、黙々と食べている盛山をじーっと眺めたり、盛山と話をした。
「そういや、細川って門限あるんだっけ? 男子大学生に門限って過保護だよな」
「過保護じゃなくて飯炊き要員なだけだ。実際、バイトとかサークルとか入れないからしんどいよ」
「サークルだったら早めに終わるところがあるんじゃないか? 学園祭終わったら一緒に探さない?」
「そうする。……あと、盛山の家にも行ってみたい」
「俺の家はいつでもいいけど、マジでテレビしかないよ」
思えば、この時から細川は、盛山の家に転がり込むことを考えていたのかもしれない。
学園祭は初夏に、早々に終わりを告げた。準備にあんなに時間がかかったのに、当日の動員は忙しすぎて、時間が目まぐるしく過ぎていった。
学園祭が終わったあとの打ち上げに、細川は参加しなかった。だから後日、盛山の家で、二人きりのお疲れ様会を開いた。少し早い時間に始めれば、細川の帰宅時間にも影響しないだろうと考えたのだ。
細川は、普段使われていない盛山宅の調理道具を器用に使いこなし、カシューナッツと野菜炒めやら、豚肉とねぎの焼きご飯やらを作り始めた。
おつまみ用のレシピであることは未成年の盛山でも分かる。二人とも飲める年ではないので、お茶で乾杯した。
「細川、本当にご飯作れるんだな。美味しい」
「おつまみ用の軽い奴だけどな。普段こういうのは作らないから新鮮だった」
「初めて作ったの?! すごいな。器用なんだなー」
「……家だとそんなに褒めてもらえねーから嬉しい」
「こんなに美味しいものをいつも作ってもらえるなんて、羨ましいぞ。俺なら定期的に褒めちゃうし、これと引き換えに何か願いを叶えろと言われたらそうするかも」
この数週間後、細川は荷物と共に盛山の家を訪れ、半ば強引に同居の約束を取り付けたのだった。口は災いの元とはよく言うが、振り返ってみると盛山にとっては幸運の元といっても良かった。
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