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同居人は料理が美味いけど、俺は料理を食べるのが上手い(10)
盛山は意識が浮上するのを感じた。
辺りが明るく暖かい。湿り気のある空気が流れ込んできている。
細川が帰ってきて、先程まで風呂に入っていたのだろう。微かに聞こえていたドライヤーの音が止む。
細川の足音が聞こえて、盛山は思わず寝返りを打った。まさか細川が朝帰ってくるとは思わなかった。身なりを整える暇もない。何食わぬ顔で起き上がって世間話をし、装いを整えてから告白するような図太さなど、盛山は持ち合わせていなかった。
ベッドの端が沈む。細川が着々と盛山との距離を詰めてくる。
寝癖のついた髪に、細川の骨ばった大きな手が触れた。細川の手つきは柔らかく、起こさないように配慮してくれているのが分かった。盛山は既に目覚めているけれど。
細川は、どんな顔をして盛山の頭に触れているのだろうか。もしかして、今日だけじゃなくて、今までもこうしてくれていたのだろうか。
盛山はもう一度寝返りを打ち、目を開けて細川の顔を覗き込んだ。細川はばつの悪そうな顔をしている。
「起こしたか? それとも起きてたのか?」
「起きてた。おかえり。……なあ、そのまま続けてくれよ」
細川の感触を手放したくない盛山は、頭を撫でられたまま、カレーの隠し味について尋ねることにした。
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