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同居人のお姉さんが、俺にもちょっかいを出してくる(8)

知恵美の軌道修正力に、賢太郎も肝が冷えただろうが健も驚いた。知恵美は、早く言わないと賢太郎の幼い頃の失態を盛山にバラす、と脅しをかけている。 脅しのバリエーションなら知恵美の方が豊富だろう、何といっても健は人質なのだから。賢太郎は後ろ姿だけでも焦っている様子が分かった。健はその失態ですら知りたいのだけれど。 「……キスはした」 「まあ、清い~。でも人それぞれだもんね。あー羨ましいなあ。何よ、姉弟揃って駄目な人に引っかかるもんだと思ったのに~」 「好きって言われてすぐに舞い上がる姉さんとは違うんだよ」 「耳が痛いなあ。でもね、好意を示してくれたなら、流さずに受け入れた方が相手も安心すると思う。賢太郎、きちんと相手の子に好きだって言ってあげてる?」 知恵美の優しい言葉は賢太郎に向けたものだ。けれど、その内容は健の心にも深く刺さった。 告白して以降、明確に賢太郎に「好きだ」と言ったことはあるだろうか。改めて確認するまでもないことだと思っていた。 そういえば、賢太郎は付き合う前、度々健に「好きだ」と言ってくれていたけれど、それは健の振る舞いに対する好感を示してくれているものだと思っていた。「好きだ」という言葉に、疑問と別の意味を感じるのも――それを受け止めるのも――健は少し遅かった。賢太郎の気持ちを取りこぼしていた自分に、今更ながら憤る。でも、それも自分が彼のことを好きだと気付いたからこそ、そう思えるのだ。 「…………付き合う前の方が言ってた気がするな。でも、どれくらい言うのが適切なんだかわからないよ。一々言う必要あるか?」 「そういう考えしてると、すぐに疑心暗鬼になって別れることになるよ? 好きだって思ったときに言っとけば良いのよ。どうせ、別れちゃったり好きじゃなくなったなら言えなくなるんだからさ」 知恵美は寂しそうな表情で賢太郎を見つめている。別れを沢山経験した知恵美は、終わりを見据えて精一杯恋人に愛を注いでいたのだろう。動機は後ろ向きかもしれないが、行動はとても前向きだと健は感じた。

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