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第45話 番外編:魔除けのドラセナ・コンシンネ〈後編〉

『お前は、嘘ばかり。コレが足りなかったんだ』  ドラセナ・コンシンネを握る悪魔は、言葉を繋ぐ。 『強がり虚勢を張る、偽物のお前を(もてあそ)ぶのが楽しくて仕方なかった』  ドラセナ・コンシンネという植物の花言葉は“真実さ”。  虚勢を張り、嘘を吐いても仕方ない。  真実さが、卑屈という悪魔を追い払う。  でも、正解のない世界で、真実だけでは生きていけない。  時にそれは、(ぼうりょく)となり返ってくるかもしれない。  それでも俺は、素直に生きたい。  まっすぐ前を向いていたい。  真実さを持っていれば、それは魔除けとなるという結末の話。 「柊さんとオレの本みたい」  ざっくりと文庫本の粗筋を話して聞かせた俺に、マコトは、口角を上げた。  言わんとしているコトがわからずに、俺は眉根を寄せる。 「柊は、“魔除け”に使われるんでしょ? それに、ドラセナ・コンシンネの花言葉は“真実さ”。それって、オレでしょ。(しゅう)真実(まこと)の話でしょ」  ははっと嬉しそうに笑い声を立てたマコトは、堪らないと言わんばかりに、俺を抱き締めた。 「オレと会う前からこの本が好きとか、……なんなんだよ、もぉー」  俺を腕の中に抱き込んだマコトは、ぐりぐりと鼻先を髪に埋める。 「オレ、ずっと隣に居るから。寂しくないとか、独りで大丈夫って言われても、離れないから」  すっと腕の力を弛め、身体を離したマコトは、にこりと笑い言葉を繋ぐ。 「オレ、マジで手放す気ないから。腹、括ってね」  ニッと歯を見せ笑ったマコトは、ちゅっと軽やかなキスを俺に見舞う。  腹を括れ…か。  お前を好きになった時点で、腹は括ってる。  お前が好きだと気づいた時点で、俺には、どうするコトも出来なくなった。  お前が幸せであるコトが、俺の中の最重要項目。  お前が放さないと言うのなら、俺はここに(とど)まるだけだ。 「どこにも行かねぇよ」  手放すまで。  飽きるまで。  続けるのも、終わるのも、すべてはお前次第だよ。  数日後、マコトの部屋の窓辺に2つの鉢が並んでいた。  ドラセナ・コンシンネと(ひいらぎ)だ。  さんさんと降り注ぐ日の光の中、寄り添うように置かれた2つの鉢は、マコトが俺たちに見立てて置いたもの。  俺は、マコトの魔除けの(ひいらぎ)。  マコトは、俺の真実(しんじつ)を暴くドラセナ・コンシンネ。

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