45 / 45
第45話 番外編:魔除けのドラセナ・コンシンネ〈後編〉
『お前は、嘘ばかり。コレが足りなかったんだ』
ドラセナ・コンシンネを握る悪魔は、言葉を繋ぐ。
『強がり虚勢を張る、偽物のお前を弄 ぶのが楽しくて仕方なかった』
ドラセナ・コンシンネという植物の花言葉は“真実さ”。
虚勢を張り、嘘を吐いても仕方ない。
真実さが、卑屈という悪魔を追い払う。
でも、正解のない世界で、真実だけでは生きていけない。
時にそれは、刃 となり返ってくるかもしれない。
それでも俺は、素直に生きたい。
まっすぐ前を向いていたい。
真実さを持っていれば、それは魔除けとなるという結末の話。
「柊さんとオレの本みたい」
ざっくりと文庫本の粗筋を話して聞かせた俺に、マコトは、口角を上げた。
言わんとしているコトがわからずに、俺は眉根を寄せる。
「柊は、“魔除け”に使われるんでしょ? それに、ドラセナ・コンシンネの花言葉は“真実さ”。それって、オレでしょ。柊 と真実 の話でしょ」
ははっと嬉しそうに笑い声を立てたマコトは、堪らないと言わんばかりに、俺を抱き締めた。
「オレと会う前からこの本が好きとか、……なんなんだよ、もぉー」
俺を腕の中に抱き込んだマコトは、ぐりぐりと鼻先を髪に埋める。
「オレ、ずっと隣に居るから。寂しくないとか、独りで大丈夫って言われても、離れないから」
すっと腕の力を弛め、身体を離したマコトは、にこりと笑い言葉を繋ぐ。
「オレ、マジで手放す気ないから。腹、括ってね」
ニッと歯を見せ笑ったマコトは、ちゅっと軽やかなキスを俺に見舞う。
腹を括れ…か。
お前を好きになった時点で、腹は括ってる。
お前が好きだと気づいた時点で、俺には、どうするコトも出来なくなった。
お前が幸せであるコトが、俺の中の最重要項目。
お前が放さないと言うのなら、俺はここに留 まるだけだ。
「どこにも行かねぇよ」
手放すまで。
飽きるまで。
続けるのも、終わるのも、すべてはお前次第だよ。
数日後、マコトの部屋の窓辺に2つの鉢が並んでいた。
ドラセナ・コンシンネと柊 だ。
さんさんと降り注ぐ日の光の中、寄り添うように置かれた2つの鉢は、マコトが俺たちに見立てて置いたもの。
俺は、マコトの魔除けの柊 。
マコトは、俺の真実 を暴くドラセナ・コンシンネ。
ともだちにシェアしよう!