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第1章 宇宙(そら)の狼 *5*
胸の突起を弄られているだけで、なぜこんなに下肢が痺れたようになるのかカシスには分からない。
一度達した身体は快感に呆気なくとろけ、男の官能を誘った。
「やあ―――ッ、ああ…………そ……こ……、やめ……ッ」
「悦い声出すじゃんか。そそられるぜ」
開かせた脚の間に身体を潜りこませ、反応して尖った小さな突起をウルフは執拗に嬲り続ける。
「イヤッ……、イヤァ―――ッ……」
涙に濡れた叫びをあげ、カシスは身を捩りなんども首を振った。
ウルフの舌がヌルリと突起を擽るたび、電流のような快感が背筋を駆け上っていく。下肢の辺りにわだかまる熱は耐え難く、繰り返される淫靡な蠢きにカシスはガクガクと四肢を震わせた。
どれほどカシスがもがいても押さえ込まれた身体ではたいした抵抗にならず、ウルフを妨げることはできない。いや、いっそう男の情欲を誘い、行いに拍車をかけているとしか見えなかった。
身の裡からこみあげてくる愉悦の波にカシスが唇を噛むたび、ウルフは低く声をたて口許に笑みを刻む。
「もっとだ。もっと悦い声で啼いてみせな」
「くぅ……ッ……ん……、んん…………」
相手の言いなりになってしまうのが嫌で、カシスは必死に声を押し殺した。けれどそれも長くは続かない。
「ふあ……ッ、ヤ……ッ…………あああぁぁぁ―――ッ!」
感じる部分を的確に探り当てる指先に肌を辿られ、すぐさま熱く息がほどける。
赤く尖りきった胸の飾りはぬめらかな舌でグイグイと押し潰され、思わずといったようにビクついた腰はしなやかな手で撫でさすられた。
次第にもどかしさを感じたカシスは、自分自身の身体の反応に狼狽え、抑えきれない涙を零す。
「ヤダッ……、イヤだ……ッ、離せ!……離せよ……ッ!」
「こんな中途半端なままで終われって言うのか?」
取り乱すカシスとは対照的に、ウルフの態度は冷ややかなものだ。腕の中に捕らえ組み敷いた獲物を前に、行為に慄く様を悠然と見下ろし楽しんでいる。
「やめちまってイイのか? 王子さま?」
「あ……、あぅ……ん…………、あああぁ…………っ」
「どうした? 嫌なんだろう?」
舌先でチロチロと胸元を嬲る曖昧な刺激は、カシスにますます大きな喘ぎをあげさせた。
嫌だと思うのにどうにもならない。
カシスの半身は触れられてもいないのに熱く張り詰め、二度目の性を放出せんと持ちわび先走りの雫をトロリと滴らせている。
ウルフは嘲るようにクツクツと含み笑った。
「こんなになっちまったら、我慢なんてきくはずもねーな」
「あ……あ……、イヤだ…………んうッ」
「『嫌だ』なんて言葉も出なくなるほど、感じさせてやるさ」
カシスの膝が抱えあげられる。ウルフの腕はそのままカシスの脚をグイと押し上げた。
身体がふたつに折られ、膝が胸につくような格好を強いられる。
双丘の狭間を割り開き、ウルフはそこへ迷うことなく顔を埋めた。まだ誰の手も知らぬ未成熟な蕾へ、唾液を乗せた舌がヌルリと這わされる。
「―――ヒアッ!」
自分でも触れたことのないような場所を突付く湿り気を帯びた感触に、カシスは驚いて涙に潤む眸を見開いた。
驚愕のあまり、まともに声すら出てこない。
ウルフの舌は襞をひとつひとつ擽り、丹念に舐めあげていく。
「ひ……ッ、…………あ……あ……」
ヒクヒクと淫らに収縮し始めた窄まりを舌先で穿たれて、カシスの腰が刺激に耐えかねのたうった。
膝の裏側を両手で押さえつけられたままでは、容易に逃げることなどできない。身体の隅々まで余すことなく探られて、力だってとうに入らなくなってしまっている。
しとどに濡れて緩んだ窄まりへ、ウルフは舌を捻じ込んできた。
「イヤアァァ―――ッ!」
身体の裡側を他人の舌に嬲られる。
性感を直接刺激するようなダイレクトな快感が、カシスの神経をスパークさせた。
脳が焼ききれるような、激しすぎる悦楽の波。
性に未熟なカシスにとって、それはあまりにもきつすぎる感覚だった。
「あうッ……あ…………」
カシスの全身がおこりのように震え、痙攣を繰り返す。
すぐにウルフは気がついた。
「ゆっくり息を吐いてみな。ゆっくりだ」
身を起こし、それまでとは打って変わってカシスに優しく囁きかける。
「そうだ、ゆっくりと呼吸しろ。慌てなくていい」
「ハ……ア…………」
抱え上げられていた膝が下ろされ、カシスはだらりと四肢を弛緩させた。ベッドの上へしどけなく身を横たえる。
ウルフの手が宥めるように髪を梳いて、カシスの呼吸は次第に落ち着きを取り戻していった。
カシスは唇に、それまでとはまるで違う穏やかな口吻けを受ける。
「ん……ふ……」
知らず甘い吐息が咽喉をついて洩れ出た。
甘やかされることに飢えたカシスの身体は、男としては未完成の子供らしさを覗かせ、ウルフの保護欲を誘う。
経験の深さを物語るウルフの巧みな愛撫を受け入れるには、カシスはまだ幼すぎたのだ。
ウルフは少しずつ口吻けを深くしていく。
これほどに幼い性を目の当たりにしていながら、このまま止めてやる気になれない自分を知って、ウルフは己自身不思議でならなかった。
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