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第7話

「んっ……そこばっか、舐めんな…っ」  玄冬に爪で傷つけられた場所を発見されてから、執拗に舌で何度も笛吹が舐めてくるのでヒリヒリと痛い程だ。 「あの黒狐め、健次郎の綺麗な肌を傷つけやがって」 「だから、そこで話すなっ……!」  肌に息が触れてくすぐったくてしょうがない。  そう訴えると、笛吹はわざと見せつけるように舌を出して、赤くぷっくりと膨れ上がっている乳首を舐め上げる。 「ここが疼いてしょうがないのか? だいぶ乳首で感じるようになってきたな……もう、ここだけで達せそうなくらいだな」 「んん……っ」  強くつままれ、その刺激が直下するように下半身が疼く。  布団のシーツがあっという間に乱れるくらい足を動かしたり、時にはギュッと硬く足を閉じたりしていると、太腿の間に笛吹の手が入り込む。 「あ……」  そろそろと上がっていく手を見つめてしまい、思わず喉が鳴ってしまう。 「ずいぶんと期待しているみたいだな、布がもう滲んでるぞ」 「……っ、ん」  指ではじくように下着をずらされ、勢いよく欲望の証しが飛び出る。先端から涎を垂らす生々しい姿に恥ずかしさを覚えながらも、笛吹の長い指が絡まるところから目が離せない。  ゆっくりと顔が下がり、前に落ちてくる髪の毛を耳にかける。何をするのだろうと思っていると、先端に舌を這わせた。 「ちょっ……うあっ」  止めるよりも前にザラッとした舌が割れ目を往復して、腰が跳ねる。 「んっ、あっ……っ、やめっ……」  止めたいのに温かい口内に迎えられ包まれる感触が気持ち良くて、喘ぎ声にしかならない。  健次郎の反応に気をよくしたのか、笛吹の行為はどんどん大胆になり、咥えた状態のまま片方の手は器用に奥へと伸び、指で中を刺激し始める。 「あ、指っ……一緒にしちゃ……ふ、あぁぁっ!」  強い快感に耐え切れずすぐに達してしまい、あまりの早さに呆然としていると笛吹は口に出された事など気にせず、口元を指で拭う。 「へっ、変なもの飲ませてごめんっ!」 「なぜ謝るんだ? 愛しいお前の精液など気持ち悪くもなんともないぞ」 「あ……そ、そう」  しれっと凄い事を言われてしまった。 (俺も、そのうち笛吹の飲めるようになったりするのかな)  ぼんやりと、笛吹のものを口に含んでいる自分を想像してしまう。 「今、いやらしい事でも考えたのか?」 「なっ、なんで?」 「中の指を締め付けてきた。これならあまり時間がかからずにお前の中に入れそうだ……」 「ひゃ、待って、まだ俺っ……」  呼吸すら整っていない状態なのに、笛吹は再び指を動かし始める。  いつもは虐められているのかと思うくらい執拗に中を弄ってくるのに、今日はどこか急くような動きに感じた。 (笛吹でも焦る事なんてあるんだ……)  その理由が、自分と同じだったら嬉しい。 「笛吹、も……いいから……っ」  早く挿れて欲しい。  全部言わなくても切羽詰まった見上げる視線でわかったのだろう。笛吹は指を抜くと、健次郎の足を大きく開く。 「くっ……あぁっ」  いつもよりも大きく感じる笛吹の熱に、無意識にガクガクと身体が跳ね上がる。忙しなく動く心臓の音がやけに耳に響いて、頭の中が回り出す。 「……っ、やはり狭い、な……」  耐えるように眉を寄せ、笛吹は長く息を吐きながら慎重に腰を進めていく。  その動きが余計に身体を熱くし、焦げ付きそうなくらい焦れて苦しい。 「笛吹……それ、や……するなら、一気にしろよっ……」  腕を掴み、力任せに爪を立てる。 「お前の望むままに」  笛吹は腰を抱えなおすと、殆ど埋め込み終わっていた自身を抜ける寸前まで引き、すぐに腰を使って一気に突き入れる。 「あ――っ! あ、あぁ……っ!」  全身が痺れるほどの快感に、嬌声を放つ。 「……なるほど、激しい方が好みなっていたとは……知らなかったぞ」 「いや……あんま激しいのは、好きじゃ……」  頭を振る健次郎の頬に手を滑らせ、ゆるやかに笑う。 「そんな事をいいつつ、感じているのだろう? 強く穿つほど、お前の中が熱くうねるぞ」 「……っ、知らないよっ、そんなの」 「なら、しっかりと教えてやろう」  笛吹は赤い目を濃く光らせ、色気たっぷりの掠れた声で囁くと背中に手を回して前へと引き寄せる。 「わわっ! ちょっ、なんだよこの格好!」  抱き起されて膝の上に乗っかった状態は笛吹の顔が近すぎる。恥ずかしくて視線を逸らすと、耳に軽く噛みつかれた。 「これだけ近ければ、お前が感じているかすぐに分かるだろう? 恥ずかしがらず、お前の感じている顔をもっと見せてくれ」  どうやら自分は真っ直ぐに甘い言葉を吐かれると弱いらしい。初めは照れて怒るものの、最後には折れてしまう。 (それどころか、感化されちゃうもんな)  笛吹の感じている顔が見たい。  そんな欲が溢れてきて、自分から抱きつく、 「……俺も、笛吹の顔見たくなってきたかも……」 「健次郎……」 「んっ…」  鼻をすり寄せ、唇が重なる。深くなっていくキスと比例するように、下からの突き上げが激しくなる。 「あっ、い、いっ……気持ち……っ」 「ああ……最高だ」  恍惚とした表情で腰を打ちつけられ、気づけば自分でも合わせて腰を動かしてしまっていた。  急速に身体の中を何かが駆けていき、呼吸が浅くなる。  喘ぎのような、ひきつけのような呼吸を繰り返しながら、笛吹に必死に抱きついた瞬間、二人の腹の間で擦れていた先端が弾けた。 「あ……はっ……」  ゆっくりと大きく息を吐いていると、じわりと中に濡れるむず痒い感覚がして、笛吹も達したのだと分かった。 「はぁ……気持ち良かった……」  思いが通じているだけで、こんなにも幸せで気持ちいいのか。 「満足そうな顔だな」  笛吹に微笑まれ、また下半身がきゅんと疼く。 (あれ? おかしいな、俺)  満足だと思ったのに、どこかで足りないと叫ぶ自分もいる。 「あ、あの……笛吹……」  自分の状態に困惑していると、笛吹はどこか楽しそうに笑う。 「満足いくまで何度でも付き合おう、いくらでも俺を求めてくれ。それが俺はとても嬉しいのだ」 「笛吹……」  あやすように優しく口づけられ、答えるように首に手をまわして強く抱きついた。 ★ ★ ★  健次郎の一日は、境内の掃除から始まる。 ――が、その日課の前に今日から父親と一緒に朝の祈祷が加わることになった。  教えてもらう言葉は本当に日本語かと疑うもので、早くも初日から落ち込み気味だ。 「もー……宮司継ぐのやめたい」  賽銭箱へと続く石階段の途中に座って愚痴をこぼしていると、隣に座っている笛吹までもが浮かない表情をしていた。 「なんで笛吹までそんな顔してるんだよ」 「……いや、俺と健次郎は愛し合っているのに、なぜ子供が出来ぬのだと思ってな……」 「ちょっと! 朝から変な事言うなよ!」 「しかし、これは深刻な問題なんだぞ」  昨晩も泣く程可愛がったのにと呟かれ、慌てて周囲に人がいないか視線を向ける。  人はいなかったけれど、呆れたようにこちらを見る黒狐――玄冬と目が合ってしまい、恥ずかしくてとっさに隠れようと思わず笛吹の大きな尻尾に抱きついて顔を埋める。 「なっ、なんだ健次郎っ!?」 「うるさい、ちょっとじっとしてろ!」  顔の熱さが引くまでは隠していたい。そう思っていたのに、気づけばもふもふの尻尾が心地良すぎてしまって、寝てしまっていたらしい。 「……あれ?」  気づけば笛吹の膝枕で寝転がっていた。 「今日から祈祷の練習だったからな、緊張していたのであろう」  優しく目が細まり、頑張ったと褒めるように頭を撫でられる。  こんな風に甘やかされて、毎日を二人で過ごしていくのだろうか。 「……百年過ぎる前に、溶けて消えそう」  健次郎一人に向けられる笛吹からの愛は、受け止めきれない程深い気がする。  もし、子供が出来れば多少は分割されるんだろうか。 (まあ、耐えられなくなった時の最終手段だな)  子供なんて冗談じゃないと言っていた自分はどこに行ってしまったんだろう。  考え一つで変わるんだなと思っていると、笛吹が肩を叩いてきた。 「健次郎、見てみろ」 「ん?」  見上げると、ひらりと小さな薄桃色の花びらが舞い降りる。 「桜だ。いつの間にか咲いたのだな」  ところどころに花を咲かせている桜を、笛吹は愛おしそうに眺める。  その横顔を見て自然と笑顔になれる日が来るなんて、本当に人生というのは不思議だ。 (きっと、百年後もこの景色をここで見ているんだろうな)  ゆっくりと時間を重ね、笛吹と二人で――  そんな予感を感じながら健次郎は幸せをかみしめるように、笛吹の尻尾をぎゅっと抱きしめた。

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