32 / 44

第32話

 取引をしよう。  男は、そう持ち掛けてきた。 「取引?」  そう、と黒スーツは頷いた。 「君と遥人くんの仲は、どうしても引き裂けないと解った。だから、ちょっぴり条件を良くしようじゃないか」 「条件、って」 「遥人くんを、この後すぐに人間に転生させてやろうじゃないか」  その条件の、どこが良いんだよ、と拓は肩を落とした。  どうせなら、生き返らせてくれればいいのに! 「転生した遥人くんを今から15年後、つまり15歳の時に、君と再会させてあげよう」  なんだって?   拓は、やや身を入れて男の話に耳を傾けた。

ともだちにシェアしよう!