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第31話
「今夜こそは、きちんと言ってくれるんだろうね!」
黒スーツの男の声は、日を追うごとにきつくなる。
「言いにくいことは、解ってる。だけどこれは、君にしかできないことなんだから!」
「解ってる。解ってるよ!」
だけど、言えない。
遥人を前にすると、どうしても言えない。
「たっくん、キスしよ」
こんなことを囁いてくる彼に、お前は死んでるんだ、なんて言えやしない。
拓は毎晩、キスに溺れた。
愛しい遥人とのセックスは、途方もなく心地よかった。
「仕方がない」
黒スーツの男は、ある晩拓に切り出した。
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