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第34話
その晩も、やはり遥人は拓の前に現れた。
「遥人、キスする前に、言わなきゃならないことがあるんだ」
「何かな、たっくん」
あどけない遥人の顔。
心を鬼にして、拓はわななく唇を開いた。
「遥人、お前本当は、もう死んじゃってるんだよ」
「え?」
「交通事故に遭って……、それで……」
拓の眼から、涙が溢れた。
まだ、癒えぬ傷。
愛する人の、死。
拓の涙を見れば、遥人も納得せざるを得なかった。
やっぱり。
おかしいな、とは思ってたんだ。
死んじゃったんだ、僕。
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