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第6話 ミツバチとアートの世界
囚われた蜂はブンブンと羽を振って、籠から抜け出そうと飛び回る。
己の危機を察した蜂は、必死にそこから逃れようと全力でもがく。全ては生きるため。人の手に捕らえられてしまったなら、それが子供であっても容赦なく毒の針をお見舞いするのだ。
――そのミツバチがお尻の針を使わないのは、囚われたことに気付いていないからかもしれない。
「………」
「疲れたかい、蜜羽くん」
「いえいえ、大丈夫です。疲れてませんよ」
その日の午後、ゆったりとした音楽が流れる美術室。
俺達美術部員は次の展覧会に出す絵を描くため、この学校で一番美しい蜂川蜜羽にモデルとなってもらい必死にキャンバスと向かい合っていた。
「急にモデルなんて頼んでしまって申し訳なかったね。展覧会が終わったら、ハニーミルクアイスを食べきれないほどプレゼントするよ」
「へへ、ありがとうございます。でもモデルなんて初めてだし、皆さんのお役に立ててるかは分かりませんけど……貴重な経験をさせてもらってるので、お礼なんて良いんですよ」
油絵具で制服を汚してしまわないようにと、蜜羽には体育着姿で椅子に座ってもらっている。部員に言われてポーズを取ったり視線を向けたり、放課後の自由時間を俺達のために使ってくれる蜜羽は噂通り天使のような青年だ。
「少し休憩にしようか。モデルも俺達も、同じ姿勢を取り続けるのはキツいからね」
「賛成!」
「お茶を淹れます、部長」
花見が丘学園の美術部員は、部長である俺を含めてたったの三人。来年新入生が増えなかったら廃部となり、部から同好会になることが決まっている。
絵を描いて美を愛でるなんて、この学校の生徒達はあまり興味がないのだ。あまり素行の良くない生徒が多いため、美術部なんて「そんなのあったんだ」程度の認識しかない。
「ハチミツ入りの紅茶だよ、どうぞ。蜜羽くん」
「ありがとうございます……いい匂い」
展覧会はもう間近だというのに、部員たちはスランプに陥っていた。描きたい意欲はあるがインスピレーションが湧かないというのだ。モデルを蜜羽に頼めば少しは刺激を受けるかと思い、結果それは大成功だった。
「本当に助かる。蜜羽くんなら何時間でも描いてられるよ」
「ああ、まるで無限にインスピレーションが湧いてくるようだ」
「ほ、褒め過ぎですよ。俺ただ座ってるだけですし」
嬉しそうにキャンバスを眺める二人の部員を見て、俺も満足していた。部員の歓びは部長の歓び。例え賞を獲れなくても、展覧会に自分の絵を出すという目標を達成できれば良い思い出になるだろう。
それもこれも、この美しいミツバチ――蜜羽のお陰だ。
「皆さんの絵、完成したら見せて下さいね!」
「ああもちろん、蜜羽くんに一番に見せるよ!」
もっともっとインスピレーションを。
更にもっと、芸術への探求心を。美への理解を。
俺は紅茶のカップから唇を離し、眠そうに頭を揺らしている蜜羽を見つめてほくそ笑んだ。
「……蜜羽くん、寝ちゃったな」
「ど、どうしたんだろ。疲れちゃったのか?」
「部長。どうしましょう、このままじゃ風邪ひくし起こしますか?」
美術室の床で仰向けになって寝息を立てている蜜羽。
俺は部員二人の肩を叩いてから、今ここにあるチャンスを全員で物にすべく先陣を切って蜜羽の傍らに膝をついた。
「お前達、もっと芸術的な美というものを見てみたいか?」
「え……ど、どういうことですか部長」
蜜羽の体育着を捲り、ゆっくりと上へずらして行く。「部長……」二人の唾を飲み込んだ音さえ聞こえそうなほど、室内は静まり返っていた。
「わ、わ……み、見えてしまいますよ、駄目ですって部長……!」
「み、蜜羽くんの……」
ウブな部員たちは好きな子の裸なんて見たこともないだろう。芸術と性には切っても切れない関係性がある。性の知識を新たに得れば、彼らの芸術はもっと輝き出すはずなのだ。
「よく見ろ、お前達。これがお前達の憧れ、――蜂川蜜羽の乳首だっ」
「う、うおぉぉぉ……!」
現れたのは薄ピンク色の二つの突起。男子とは思えないほど形の整った、まだ刺激を知らない蕾のような美しい乳首。
「ぶ、部長……! 目が眩んでしまいますっ」
「ついでに股間が……!」
「これは自慰のためのエロハプニングじゃないぞ、お前達。純粋な芸術への理解、創作意欲向上のための大事な機会なんだ」
「芸術……」
「確かに、芸術だ……」
二人が何かを決意したように、水を張った筆洗バケツの中からそれぞれの絵筆を取り出した。
「部長……」
「さあ、お前達。この美しいキャンバスをもっと美しく彩り、芸術的理解を深めるんだ」
「み、蜜羽くん……」
小さな乳首の先端に、たっぷりと水分を含んだ筆の先が触れる。
「ん、……」
寝たまま少し身じろぎした蜜羽の口から、甘い吐息が漏れた。
「部長……!」
「ああ、そうだ。今のが蜜羽を『美しく彩る』ということだ。俺達の手でもっと彼を美しく、咲かせてあげよう」
そうして俺も自分の筆を取り、欲望と好奇心から溢れてくる唾をごくりと飲み込んだ。
「んー、……あ、な、何か……変……くすぐった、……ぃ」
蜜羽の体を弄り始めてから約五分後、ようやく彼が目を覚ました。
「――ひゃっ、……何、何してるんですかっ……!」
「蜜羽くん、静かに。今俺は愛する部員に芸術というものを教えてあげているんだ」
「げ、げいじゅつ……?」
「ああそうだ。こういう風に」
乾いた筆の先で蜜羽の乳首を撫で、さわさわとくすぐるように動かす。
「ひゃあっ、あはは、くすぐったいです……! 先輩、やめ、……や、……ぁん」
「すぐに良い声になったね。……ほら、こっちも」
もう片方は濡れた筆で。同じように乳首の先をくすぐるのではなく、たっぷりと#舐__ねぶ__#るように、いやらしく蠢かせる。
「あっ、……あぁ、あん……何か、これ……ごめんなさい、エッチな気分に、なってしまいます……」
素直に頬を染めて体をくねらせる蜜羽はやはり美しい。
「ごめ、なさ……げいじゅつ、なのに……。俺には、……あぁっ……」
「いいんだよ蜜羽くん、好きなように乱れて。エッチな気分も芸術には必要だからね」
「ほ、ほんとですか……ぁっ、あ……乳首、さわさわするの気持ちいい、ですっ……」
部員の一人が乾いた筆を胸の中央に触れさせ、ゆっくりと一本線を引くように下へ下ろして行く。
「ふあぁっ……!」
「デリケートなところだから、優しくね」
窪んだ愛らしい蜜羽のヘソに筆が触れた。初めは円を描くようにヘソの周りを筆で撫で、少しずつ円を小さくして行き、その中心を優しく丁寧になぞる。
「はぁっ、あ……おへそ、駄目です……ゾクゾク、して……!」
「可愛いよ蜜羽。そのとろけた顔、まさに芸術的だ」
「先輩、……ふ、ゃ……もっと、……」
「部長。蜜羽くんの短パンがキツそうです」
「そうだね。そろそろ下のキャンバスも気持ち良くしてあげよう」
部員の手が蜜羽の体育着のパンツを下着ごとずらして行く。それまで押さえつけられていた蜜羽の芸術的ペニスが、短パンを脱がした瞬間にぷるんと愛らしく飛び出した。
「蜜羽くんのおちんちん……」
「い、いい匂いがします、部長……」
「お前達、まだペニスに触れたら駄目だよ。乳首とおへそを充分に可愛がってあげるのが先だ」
「――あぁ、あっ。先輩、……もう、だめ……」
濡れた筆が蜜羽の乳首を捏ね回し、くすぐり、撫でて行く。
「やっ、あぁ……! そ、それ……素早く、こちょこちょってするのが、ぁっ……!」
「気持ちいいんだね?」
乾いた筆が蜜羽のヘソを撫で回し、焦らすように窪みのふちをなぞり、時折ふっと息を吹きかけられ、また撫でる。
「あんっ! や、やぁっ……おへそは、……だめ、です……!」
「蜜羽くん、すっごく感じてるね……。おへそをなぞると、ちんちんがピクピクしてるのが分かるよ」
「ど、どっちも気持ちいい、です……! あぁぁ……」
さあ、そろそろ最後の仕上げだ。
俺は何も穿いていない蜜羽の下半身に手を伸ばし、両膝を持ち上げて二人に広げて見せた。股の間で揺れるペニスの先端からは、透明な体液が垂れている。
「可愛いミツバチは、ココをどうして欲しいのかな?」
「あ、う……同じ、ように……筆で……」
「言ってごらん、彼らがその通りにしてくれるはずだよ」
「ふ、筆で……俺のおちんちん、くすぐって……下さい」
ごくりと唾を飲んだのは部員たちだけではない。俺もだ。
「み、蜜羽くんっ!」
「あぁぁっ!」
濡れた筆でペニスの先端を、乾いた筆で竿から根元までを。二人の手と筆が蜜羽の欲張りでいけないペニスにお仕置きとご褒美を与えている。蜜羽は俺の腕にしがみつき、自ら大股を広げて声を張り上げた。
「やあぁっ、そ、それ気持ち良過ぎです……あぁ、あ!」
「すごい。筆がぬるぬるだ……」
「も、もっとぬるぬるして……。ちんちんの先っぽから全部、ぬるぬるしたの、いっぱい塗って……!」
蜜羽の言葉を受けた先端担当の部員が、竿担当に顔を向けた。
「大丈夫だ、蜜羽くんの言う通りにしてあげてくれ」
「そ、そうだが、お前の芸術は……」
「俺はこっちを可愛がってあげるさ」
竿担当の部員が乾いた二本の太い筆で、蜜羽の小ぶりな玉袋を左右同時に撫で回す。
「やっ、あ……! た、玉も……こんな、の……耐えられな、です……!」
「蜜羽くん。望み通り、おちんちんを全部ぬるぬるにしちゃうよ……」
「あっ、ああぁ……! 気持ちい、っ……気持ち、いいぃ……!」
無意識に腰を揺らしてトロ顔になっている蜜羽が、俺の顔を見上げた。
「ぶちょ、さん……おちんちん、イッちゃいそ、です……」
「ふふ。いいんだよ、いつでもイッていい。俺もお手伝いしてあげるね」
自分の筆を取り、蜜羽の乳首とヘソにあてる。
「あぁっ、あ、……全部……! あぁんっ!」
「全身こちょこちょされて、おちんちんぬるぬるされて、思い切りイッちゃいな蜜羽――」
「イ、イきます……イッちゃ、あぁ……ああぁっ!」
「見てごらん、お前たち。これが『美』だ。よく分かっただろう」
「は、はい……!」
「凄く美しいです……!」
股を開いたまま床に転がり、自身の白い精液で体を彩った蜜羽。熱を帯び桃色に染まった頬。
荒い呼吸は心臓が鼓動している証。生きている芸術品、蜜羽――。
「これでインスピレーションが湧いただろう。展覧会はばっちりだな!」
「はい! 俺達、頑張ります!」
「蜜羽くんのためにも!」
「……良かった……おれ、皆さんの役に立てたんですね……」
そうして俺達は自分史上最高の芸術作品をそれぞれ描き上げることに成功したが、どうにもその絵が十八禁ぎりぎりどころか余裕で振り切る作品となったため展覧会で出展するのは却下された。
しかしその絵の噂を聞きつけた生徒達が次々に入部届を持ってきたお陰で、どうやら廃部は免れそうである。
第六話・終
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