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第1話
「ぎゃ~!」
隣の部屋から悲鳴が聞こえた。
がしゃぁん、と窓の割れる音が響く。
黒崎(くろさき)はそれを聞くと、手にした本を閉じた。
そして、客を招く準備を始めた。
バスタブに湯を張る。
ベッドにシーツを広げる。
救急箱を出した所で、ドアを叩く音が聞こえた。
「黒崎、いる?」
佐野功(さの いさお)。
額にこぶを作り、擦り傷だらけ。
頬には、ひっかき傷まである。
「そろそろ来る頃かと思った」
「いつもすまねえな」
佐野は玄関で服の埃を叩き、部屋へ入った。
「風呂、借りるぜ。髪の中まで砂粒だらけだ、まったく」
「自業自得だろう」
黒崎の言葉に肩をすくませ、佐野はバスルームへ消えた。
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