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第28話
朝の光が、カーテンの隙間から佐野の眼を刺した。
ベーコンの焼ける香ばしい匂いと、コーヒーを淹れる芳しい香り。
幸せの匂いを胸一杯に吸い込んで、佐野は起き出した。
キッチンへ行くと、フライパンを持った黒崎と顔が合った。
二人で、にやりと笑った。
「すまねえな。朝飯まで作らせちまって」
「さすがに疲れただろうからな」
「黒崎くんのエッチ!」
確かに、昨夜はやたら張り切った。
黒崎に見られている、という昂奮のせいもあったが、わだかまりが解けて一層かわいく思えるようになった泉の体は、天国に行けるくらい気持ち悦かった。
交わりを解いて寄り添ったところで、黒崎の姿がもう傍にない事に気づいた。
いつの間にか、寝室を出て行った黒崎。
事後の甘いひとときを邪魔しないようにとの気遣いは、心底嬉しかった。
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