1 / 33

第1話

 私が案内できるのはここまでだ。  聖地カラドから中国までの道中、一言も口をきかなかったスーツの男が初めて少年に話しかけた。  最初の言葉が、別れの言葉になろうとは。  しかし、それに感傷を抱くような少年ではなかった。  所詮この男は、自分を修行地へと導くだけの役割しか持っていないのだ。  少年・天佑(てんよう)は唇を真一文字に結んだまま、うなずいた。 「ここからは、彼が君を連れてゆく」  は、と天佑は男が指差した方に顔を向けた。  ここから、まだ先があるのか。  周囲はすでに、閑散とした小さな村なのだ。  ここ以上に、さらに辺境へ向かうのか。  カラドの使いから天佑を引き継いだ男は、ポロシャツにチノパンというラフな格好をしていた。  そして、よく喋った。

ともだちにシェアしよう!