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第6話
では、と師父は立ち上がった。
「ついてきなさい」
大滝から離れた家屋に、天佑は案内された。
戸を開けて中に入ると、意外な光景が目に飛び込んできた。
「師父、今日はお早いのですね。あれ?」
少年が、豆の鞘を剥いていた。
天佑と、同じ年ごろの少年だ。
黒く美しい髪を、ひとつに束ねている。
その瞳も髪と同様漆黒で、肌の白さを際立たせる。
赤い唇は微笑をたたえ、素直な心を伝えてくる。
天佑は、とたんに耳が熱くなる心地を覚えた。
少年もまた天佑の姿に驚いたらしく、その手を止めた。
「浩宇(ハオ・ユー)、新しく弟子になった天佑じゃ。いろいろと教えてやっておくれ」
「天佑、僕は浩宇。よろしくね」
困ったことに、師父とは違いテレパシーの使えない浩宇の言葉は解からない。
とまどった様子で師父の方を向くと、にっこり笑って紹介してくれた。
「浩宇も天涯孤独。わしの身の回りの世話をしてくれているのじゃよ。おぬしもやっかいになるのじゃ。仲良くしなさい」
まずは、言葉が通じるようにならねばな、と師父は続けた。
「浩宇、天佑に言葉や勉強を教えてあげなさい。彼はカラドから来たばかりなんじゃ」
「はい」
こうして天佑は、師父と浩宇、二人の先生に教えを請うこととなった。
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