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第11話※
幸生はぼうっとしたまま、ベットに腰を下ろしていたが、玄関のチャイムの音で我に返った。
玄関を開けると、焦ったような顔の太雅が汗だくで立っていた。太雅の横に、黒いマウンテンバイクが目に入った。
電話から約一〇分程だっただろうか。太雅と幸生の家は通常なら、三〇分近くかかる距離だ。相当スピードを出してきたという事だ。
(本当に太雅は俺の事、好きなんだな)
普段の感情が読み取れない太雅だったが今は息を切らし、焦ったように顔を浮かべている。自分の為に、必死になっている太雅の姿に、幸生の腹の奥がギュッとなったのを感じた。
「早かったね」
玄関を開け、太雅を中に通す。
「ああ、夢中でチャリ漕いだからな」
太雅が幸生の家に来たのは、これで三度目だった。部屋に入ると、太雅はドアの前で突っ立っている。
「座れば?」
「あ、ああ……」
太雅は床に直接座り、幸生はベットに腰を下ろした。
(そう言えば、着替えてない)
不意に自分が制服のままだと気付いた。
「着替えるね」
クローゼットの前に立ち、幸生は制服を脱ぎ始めた。いつも部室で互いの着替えなど見飽きている事を思い、幸生は何も考えず、ブレザーを脱ぎシャツも脱いだ。上半身裸になった時、ふと視線を感じ太雅を見た。
目を向けた瞬間、太雅はバッと視線を逸らし、その顔は真っ赤だった。
「なんで、顔赤いの? 着替えなんて部活で見慣れてるじゃない」
「う、うるせーよ!」
考えてみれば、太雅は自分を好きだと言った。男である自分を、太雅はそれでも触れたいと思うのだろうか。
幸生は上半身裸のまま、太雅の前に座り込んだ。
「おい……早く上、着ろよ」
太雅は顔を赤くしたまま、こちらに目を向けてはくれない。
幸生は太雅の右手を取ると、それを自分の胸に導いた。
「俺は男で胸なんかないけど、それでも触りたいとか思うの?」
「や、やめろよ!」
太雅に手を振り払われてしまった。
「言っただろ! 俺はおまえが好きなんだよ! 触りたいに決まってんだろ!」
それでも幸生は太雅の膝の上に跨り、太雅の首に腕を回した。
「いいよ、触って」
「⁈」
太雅の目が見開き、その目で幸生を凝視した。
「ほら、こことかさ」
もう一度太雅の手を取ると、その指で胸の中心を触らせた。跨った幸生の太もも辺りに、硬いものが当たっている。
「太雅の勃ってる……」
「やめろ! 幸生!」
幸生を引き離そうと、太雅は両腕で幸生の肩を押した。
「太雅は俺の事、好きなんでしょ……?」
幸生の目から涙が溢れてきた。
「だったら、鉄郎の事忘れさせてよ! めちゃくちゃにして、忘れさせてよ!」
幸生は縋るように太雅に抱きついた。太雅の手がそっと背中に触れたのを感じた。
「俺だって! できることならおまえの中から、鉄郎の存在消したい……! どうしたらいいんだよ…………!」
太雅の声が震えているのが分かった。
「今だけでもいいから……お願い、太雅……」
二人は互いの顔を見ると、どちらともなく唇を重ねた。
とにかく今は鉄郎の事を忘れたかった。鉄郎の存在を忘れられる事をしてほしかった。
太雅によってベットに押し倒されると、何度もキスをされた。首筋、胸の中心を吸われ、自然と幸生の口からは艶めいた声が洩れた。
「途中でやめろって言っても、やめてやらねえからな!」
薄っすらと目を開け太雅を見ると、息を荒くし興奮した雄の顔をしていた。
ゾクリと幸生の体が震え腰がズクズクと疼き、太雅のその雄の顔に幸生の体が欲情をしたのを感じた。
「お願い……忘れさせて……太雅……!」
その日、幸生は太雅に抱かれた。太雅は何度も幸生を求めた。太雅の中心が自分の中に入った時、痛みで気を失いそうになった。それでも太雅はやめてはくれなかった。最初は、痛み辛さ苦しさしかなかった体は、何度も繋がると徐々に快感へと変化していった。太雅のセックスは荒々しいものだったが、何度も名前を呼ばれては、好きだと耳元で囁かれ、その度に幸生の体は反応し、欲情していった。
自分とは違う、逞しい体躯。部活の着替えで見慣れてるいるはずなのに、抱かれている今、性的意味合いで見た瞬間、酷く卑猥なものに見えた。
(俺は今、太雅に抱かれてるんだ……そうか、やっぱり俺は…………)
その時、幸生は自分が男に抱かれる事を望む人間なのだと、実感した。前々から、もしかしたら自分は同性愛者なのでは、と疑ってはいた。だが、それを素直に認めたくはなかった。男が好きなのではなく、鉄郎が好きなのだと無意識に言い聞かせていた。
望んだ相手でないにしろ、男の太雅に抱かれているという妙な高揚感と満足感が物語っていた。
「た……いが…………もう、無理……」
何度目か分からない射精感に、幸生の体が震えた。腹の奥から這い上がるような、快感の波に恐怖すら覚えた。
太雅から逃げようとすると、ガッチリ腰を掴まれた。
「逃げんな」
力で太雅に敵うはずもなく、後ろから何度も突かれた。
「太雅……また、イっちゃう……」
「何回でも……イケよ!」
その言葉と同時に、太雅のものが幸生の奥まで当たった。
「!!」
幸生のチカチカと目の前がスパークしたような感覚になり、吐精と同時に太雅の熱いものも中で感じた。
幸生はそのまま気を失うように、眠りに落ちていた。
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