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ある日の昼休み、1階の購買から教室に上がっていたら、猛ダッシュで階段を駆け下りるデカい奴とすれ違った。
うわばきの色からして、1年。
駆け込んだ先は、2階。3年生の教室だ。
怒声が聞こえたと思ったら、色々投げ飛ばす音とかも聞こえてきて、なんとなく面白そうだから行ってみた。
クラスのバカ20人対、そいつひとり。
最初は野次馬に混じって見ていたけど、なんだか面白そうだと思ったので、意味もなく突入してみた。
尚ちゃんに怒られるかなと思ってチラッと見たら、尚ちゃんもため息混じりにやってきて、参加。
5分で一網打尽にした。
デカい奴、澤村とは、顔見知りくらいの感じになって、たまに関わるようになった。
澤村は、めんどくさいことを一切やらない性格で、いつもローテンション。一緒にいても楽だ。
尚ちゃんが、『澤村はつるんでもいいかも。学校生活が省エネで済みそう』と難しいことを言い始めたので、よく分からないけど、3人でいることが増えた。
実際、澤村とつるみ出してからは金に困らなくなったり、無意味に絡まれるような場面が減った。
最初は、周りの目が澤村の子分扱いであまり気分は良くなかったけど、半年も一緒にいたら、3人ともヤバいと認識されはじめたので、満足した。
2年に上がってから、資金源として、クラスの奴をカツアゲし始めた。慧という奴だ。
そして澤村の思いつきで、もうひとり、渚というの奴を連れてきて、ヤらせて客から金を取るようになった。
最初は嫌がっていたふたりだったけど、本気で好き同士になったらしく、いつもくっついているのを、なぜだか少しうらやましく思っていた。
オレも尚ちゃんとあんな風にできたらいいのにと、そういう想像で抜いたりしていた。
慧と渚が仲良さそうにくっついてるのを見ていると、マスコット的に癒された。
渚は普段はほとんど無表情、しゃべらないのに、慧を抱く時だけは優しくて紳士で、あんな風に扱われたら慧はたまらないだろうなと思う。
オレも、尚ちゃんにああいう風にしてあげられたらいいのに、と思って、ああそうか、これは尚ちゃんのことが好きなんだと気づいた。
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