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 美貌の作家、雨月(あまつき)ほむら。  耽美で、どこか寂しげな筆致もさることながら、物腰やわらかく上品な立ち居振る舞いもあいまって、文壇でひときわ熱視線を浴びている。  そんな彼の裏の顔を知るのは、僕だけ。  僕こと正木(まさき)(りく)は、半年前から彼の担当についている、新米編集者だ。  ベッドの上。雨月先生がひざ立ちになって、僕は体を丸めてペニスを口に含んだ。 「ん、」  雨月先生は、僕の頭をそっとなでて、前後する動きをサポートしてくれる。  ちょっと苦しい、けど、それもじわじわとした興奮になってくる。  上目遣いに表情をうかがうと、いつも涼しげな顔をする彼が、少し余裕のなさそうな目で僕を見下ろしていた。  ほんの少し口を開いて、浅い呼吸で。  絶対下手なのに、僕の口で気持ち良くなってくれてるんだと思ったら、それだけで自分も興奮してしまう。 「りくさん、上手ですよ」 「ん、はぁ……、ぅ、んぐ」 「はあ……すぐにイッてしまいそうです」  この人の口から、『イく』なんて言葉が出てくること自体、ギャップなのだ。  そういう俗的なこととは、無縁そうな雰囲気なのだから。 「んぐ、先生、……イッてください」 「口の中に出してもいいですか?」 「はい」  くぐもった声で返事をし、必死に頭を前後する。 「ああ、りくさん……」  あごを跳ね上げて、白いのどをさらす。妖艶だ。 「あ、イく、……ぁあ……ッ……っ」  ドクドクと、ペニスが脈打つ。  ビュービューと注がれる温かいものを、残らず飲み込む。  出し切った雨月先生は、はあはあと呼吸を整えた後、僕の頭をなでた。 「たくさん出してしまいました。大丈夫ですか?」 「ん、と、僕も早くして欲しくて、どうにかなっちゃいそうです」  雨月先生はほんの少し目を細めて笑い、僕の肩を押してごろんと寝かせた。 「ここからは私は、先生じゃないですよ。ほむらです」 「ん、ほむらさん……挿れてください」  誰も呼ばない名前。  ほむらさんは、ローションを手に取り、細長い指をそろっと後孔に差し込んだ。 「んぁ……」  ぬち、ぬち、と、粘着質な音がする。 「あ、ぁ……、ほむらさん。きもちい」 「まさかこんな純情そうな子が、こんな風にほてった顔でいやらしく見つめるなんて、誰も思わないでしょうね」  そうしたのは、ほむらさんなのに。 「ほむらさんのせいで、エッチになっちゃったんです」 「それならなおさら、可愛らしいですね」 「あ、あっ、ぁ」  自然と腰が揺れる。  こんな細い指じゃなくて、もっと太くて熱いもので、お尻の中の壁を擦って欲しい。 「ぁっ、もう欲しいです、ください」 「まだダメですよ。もう少し」 「ん、ん……、痛くてもいいから。早く」  ほむらさんは、空いた片手で自分のものをしごき始めた。 「挿れる前に、教えてください。きょうはどこが気持ちいいですか?」  そう言いながら、あちこちをぐいっぐいっと押す。 「ぁあっ、そこ、うえのところ……」 「ここですね?」 「んんっ、」  こくこくとうなずく。  ほむらさんはくるりとコンドームをつけると、そのまま先っぽをあてがってきた。 「挿れますよ」 「はい」

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