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 僕の家は財閥系の一族で、すごく簡単に言ってしまえば、お金持ちなのだと思う。  通っているのはいわゆる名門中学だけど、家に執事やメイド、専属シェフがいると言うと、仰天される。  そんな感じだから、友達の中では、少し浮いている。  もちろんみんな、基本的には育ちがいいので、いじめみたいなバカなことは誰もしない。  ただ、僕に対して、なんとなく腫れ物に触るように接しているんだろうなというのは分かる。  孤独で自分がかわいそうと思ったりはしない。  恵まれた環境に生まれた自覚はあるし。  でも、心底信頼できて、何でも話せる人というのがほとんどいないのは、ちょっと寂しい。  それに、実際困ってもいる。  中学に上がってからちょくちょく、おかしなことが起き始めた。  ひとりで部屋にいる時、急に体が熱くなって、ゾワゾワすることがある。  なぜだかちんちんを触りたくなって、手を伸ばすと、固く大きくなっている。  なんとなくいじってみたら、すごく気持ちいい。  でも、その後どうしたらおさまるのかが分からない。  気持ちいいまま、布団にもぐっておさまるのをじっと待つしかない。  それでもおさまらないとまた少し触ってしまって、また固くなってしまう悪循環。  キングサイズのベッドの中で、背中を丸めて小さくなりながらころころと寝返りを繰り返す僕は、はっきり言って、情けないと思う。  股間が変だなんて、こんなこと親に言えるわけもなく、かと言って友達にも、話せるほど打ち解けた人はいない。  でも、ひとりで悩むのに、だんだん精神的に疲れてきてしまった。  そんなある日の夕方、学校から帰って着替えようとしたら、また例の症状が出た。  苦しい……。  ふと時計を見ると、もうすぐ、執事の広田さんが来る時間だと気付いた。  どうしよう、それまでにおさまるかな。  下を刺激しないように、服を着替える。  盛り上がった下着が目に入った時、ふと、広田さんになら相談できる気がしてきた。  広田さんは、僕が心を許せる数少ないひとだ。  僕が10歳、広田さんが22歳の時にうち来て、3年以上僕の面倒を見てくれている。  優しくってかっこよくって、憧れの人だ。 ――コンコン 「失礼します。よろしいでしょうか?」 「はい、どうぞ」  ベッドに腰掛けたまま答える。  広田さんは、僕の姿を見て、ちょっと驚いていた。  ズボンを履いていないからだ。 「弘太郎様? お風邪を召しますよ」 「いや……えっと、広田さんに相談があって……」  恥ずかしく思いつつ、手招きをする。 「あの、こうなっちゃってるんですけど、どうしたらおさまるか分かりますか?」  広田さんは、僕の股間を見た後、目の高さまでしゃがんでにっこり微笑んだ。 「病気ではありませんから大丈夫ですよ。みんななります」 「広田さんも?」 「ええ、もちろん」  びっくりした。僕だけじゃなかった。 「あの、どうしたらいいですか?」 「……お手伝いしましょうか」 「お手伝い? ですか?」  僕が目をぱちぱちしていると、広田さんはすっと立ち上がって言った。 「夕食を少し遅らせるよう手配して参りますね。それから、人払いもしますので、ご安心ください」  にっこり笑って、出て行ってしまった。

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